地球で最も北にある人間の住む街。
地球上で最も北にある街とは、どの国にあるでしょう?
ロシア? アラスカ(アメリカ)? アイスランド? ‥いえいえノルウェーです。
ただし、その街があるスヴァールバル諸島は、ノルウェー本土から約1300キロメートルも北にあり、唯一の有人島スピッツベルゲン島には、”地球上で最も「北」にある街”が存在します。
スヴァールバル諸島の位置はココ。
うん、ノルウェーよりもかなり北の方。
北極を中心として見るとこのあたり。
もはや北極圏と言うより「北極にある街」という言い方が一般的に。
さらに、衛星写真で実際の姿を見ると・・
いやぁ真っ白・・と言うか、とても人間が住める場所では無い気がします。
それもそのはず、スヴァールバル諸島の6割は氷河で覆われ、3割が岩山の不毛の地。残った1割に僅かに植生が見られます。
そんな中、島内の最大の人口居留地がロングイェールビーン。さらに北西にあるニーオーレスンはかつて炭鉱で栄えた町ですが今は廃棄され、極地研究の国際研究拠点に僅かな研究者が残るのみ。
ということで、「極北の街」と呼べるロングイェールビーンはこんなところ。
トナカイも普通に街中を闊歩しています。(スヴァールバル・トナカイ)
もちろんホッキョクグマも。
居留地外に出る時には、ホッキョクグマを威嚇するための道具を携帯するよう義務付けされているそうです。
この地は降雨量が少ないですが、寒冷な気候で蒸発しにくいため真水(あるいは氷)が存在するので、動植物は生きられるのですね。
そして、教会もちゃんとある。
周囲は断崖絶壁。
そして、諸島は北極圏に位置するため、夏季には白夜、冬季には極夜になります。ロングイェールビーンがある北緯74度付近では、白夜が4月20日から8月23日まで、極夜が10月26日から2月15日まで続き、夏至の太陽は真夜中でも太陽角12度までしか沈みません。
そんなスヴァールバル諸島ですが、幸いなことに温暖な西スピッツベルゲン海流のために冬季の気温が和らげられ、同緯度のロシアやカナダよりも2度高い。
この大西洋の温かい海水のため、1年のうちかなりの期間が航海可能です。
ということで近年、「極地観光」を楽しめる場所として脚光を浴びているのです。
もともと2600人しか居なかった人口も、このところ増加傾向だそう。
居住地
交流施設も。
博物館も。
そして、立派なリゾートホテルも。
そんなスヴァールバル諸島ですが、廃墟も存在します。
それがこちらのピラミダと呼ばれるゴーストタウン。
写真の中央にあるのはレーニン像。そう、この島は長く旧ソ連と領有権争いがあり、旧ソ連も移民を送り込んで炭鉱の開発を行っていました。
しかし、産出量が採算ラインを下回ったため、途中で事業が放棄され、街はゴーストタウンと化したまま放置されたのです。
この奇妙な景観は、写真家さとうけんじ氏の写真集『奇界遺産』でも同様なアングルで掲載されています。(上の写真はWikipediaより)↑
さらに、このスヴァールバル諸島は人類にとって非常に重要な意味を持つようになりました。
それは2008年、この地に「あらゆる危機に耐えうるように設計された終末の日に備える北極種子貯蔵庫」いわゆる『スヴァールバル世界種子貯蔵庫』が設置されたためです。
世界種子貯蔵庫の入口
永久凍土層に築かれた地下貯蔵庫には300万種の種子が保存され、仮に地球温暖化が進んで海水面の上昇が起こっても対応できるよう海抜130メートルの岩盤の中に貯蔵されました。(現在、更に対応強化工事が行われている。)
まさに、現代のノアの箱舟【植物版】。
ということで最後の一枚は、地球の未来を救う植物の守り人たちが住む"極北の街"ロングイェールビーンの美しい夜景です。
《配信:2024.3.6》
Wikipedia、Vogue、その他のサイトから。 |