一週間前にアップしたかった・・。
というのも、昨年6月のホルムズ海峡におけるアメリカ軍ドローンの撃墜事件に端を発し、年末の在バグダッド米国大使館襲撃事件などに業を煮やしたトランプ大統領が年明け1月3日、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を爆殺。
これに対してイラン側が報復を宣言するや否や、トランプ大統領は「アメリカは戦闘の準備はできている。もし攻撃を受ければイランの軍事施設・文化遺産を破壊する」と迫ったからであります。
軍事施設ばかりでなく『文化遺産』・・ここに世界のモラリストは一斉に反撥。もちろん、博物館の副館長を務めていた僕も心穏やかでいられる訳がありません。
イランにはエスファハーンのイマール広場をはじめペルシャ文化の多くの世界遺産が存在します。
ツイッターやインスタグラムで次々に「イラン文化」というハッシュタグが共有され、心ある人たちが『美の盾』運動を始めたのであります。
そう・・まさにココ。その一翼に加わりたかったのであります。
あ・・『美の盾』という言葉で表現したのは、同僚だった某県立博物館のドロシー(通信ネーム)ですけれども(笑)
そのペルシャ文化がどれだけ素晴らしいのかといいますと、まずはエスファハーンのイマーム・モスク。
ををををを~!
こちらが全景。
そして主礼拝室の大天蓋。
エスファハーンの世界遺産イマール広場の南側にあるイマール・モスクはイスラム革命以前はシャーモスク(王の寺院)と称され、ペルシャ文化を代表するものの一つ。
二基のミナレットを備えた主門の天井部(1枚目の写真)は、ムナルカス(蜂の巣状装飾)と呼ばれる精緻なタイル細工が施され、見る者を圧倒します。
歴史学者のアーサー・ポープはこれを評して「ペルシア建築の素晴しさは、その優れた技巧性にある。人を威圧するものではないが、威厳があり壮麗で印象深い」と。
むべなるべし。
そして、イマール広場の東側にあるのがシャイフ・ルトゥフッラー・モスク(聖職者長の寺院)。
イマール・モスクの青を基調とした色合いに対して、こちらは黄色がベース。王族専用の礼拝堂として用いられ、主門の天井部には同じようにムナルカス細工があります。
ドームを覆う流麗なタイルワークの美しさは格別で、ペルシャ・サファビー朝建築の白眉と言われています。
うむぅ・・素晴らしい。タイルワークの極北と言っても過言ではありますまい。
次は、イラン・ファールス州のシーラーズにあるアリー・エブネ・ハムゼ廟。
"万華鏡"とも呼ばれる鏡を張り付けたグリーンの聖廟。イスラムの聖人エミール・アリを祀った緑色の宇宙。
中に入れば感嘆の声が出ること間違いなし。
中庭の様子。
聖人の墓。女性の参拝にはチャドル着用が必須。
そして、同じシーラーズのシャー・チェラーグ廟。
アッバース朝のシーア派迫害から逃れてこの地にやってきた第7代イマームの子であるムハンマドとアフマドを祀った聖廟。
鏡の装飾を拡大してみるとこんなふう。
なんとゴージャスな!
この精緻な文様を組み合わせて、この世のものとは思えない異空間を創り出しているのですね。
さらに、シーラーズのピンクモスク。 正式名称は「マスジェデ・ナスィーロル・モルク」。
礼拝堂。
ステンドグラスとペルシャ絨毯が織り成す光の綾取りに息をのむ。
全景。
シーラーズにピンクのモスクが作られた理由は、こちらと無関係ではありますまい。
この地でピンク・レイクと呼ばれるマハール湖。
これは冬場の写真ですが、夏場にはもっと鮮やかなピンクに染まるとのこと。
湖と言いますが、ウユニと同じく塩湖と呼ぶのが正確でしょうか。
イランのその他の世界遺産。
まずはアケメネス朝ペルシャの首都であったペルセポリス。
次に、古代エラム人が現在のイラン・フーゼスターン州に作った複合遺跡チョガ・ザンビール。メソポタミア地方以外では数少ないジッグラトが存在している。
アルメニア人修道院建造物群。下はそのうちタデウス修道院。
そして、タブリーズの歴史的商業施設(モッザファリーエ・バザール)。
まだまだありますが、トランプ大統領はこうした人類の遺産とも言うべきペルシャの歴史遺産の破壊を宣言したのです。
これを暴挙と呼ばずして何と呼ぶか。
・・今週に入り、イランの報復攻撃はアメリカ側に事前通告がなされ、人的被害を出さなかったことで、アメリカもこれ以上の反撃はしないと鎮静化の方向になったようです。
その判断の一部分に『美の盾』の運動も役立ったのでしょうか?
ひとまずは胸を撫でおろしている僕なのですが・・。
《配信:2020.1.11》
葉羽 アメリカはイラク戦争の時もイラクの文化遺産を破壊しましたからね。どうしてこんなに「文化」に対して無頓着でいられるのか。アメリカ発の文化と言えば・・ミッキーマウスとハンバーガーしか思いつかないけれど(笑) |