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 その101 バーズ・アイ
「モーニングコーヒー」Benchi time

 ついつい引き込まれてしまう不思議な写真たち…。

 今回はまず、この画像をご覧いただきましょう。

 なんとも不思議な点景。いったいこれは何なのか?

 では、もう一枚…。

 おや!? …いよいよ分からない。でも美しいコンポジション。

 中央から下部の人工的な幾何学模様に対して、上の方には何やら不定形の物体が。

 さらにもう一枚。

 これはもしや…「橋」? そして車両?

 そうです、これらはいずれも上空から地上を見下ろして撮影された写真たち。

 そう…まるで『鳥の目』のようにして。

 一枚目は散水機が並んだ畑でしょうか。そして二枚目はボートの係留場に流氷が迫っている写真。

 三枚目は凍り始めた河川の上を跨ぐ橋…いずれも憶測ですけれど。

 というのも、これらの写真はニューヨークの「The Curator Gallery」において『PHOTOGRAPHS IN "FADE TO WHITE"』というシリーズ名を付して公開されているものの「解説」などは付いていないからです。

 撮影したのは、ポーランドのカクパー・コヴァルスキ。

 その方法はドローン?? …いえいえ全くそうではありません。

 これらはすべて、愛用のジャイロコプターに乗って彼自身が空から撮影した写真。

 しかも驚くべきことに【一切の加工が入っていない】写真なのです。

 ええ…"見たまんま”♪

 そのジャイロコプターがこちら。

 

 一緒に写っているのはもちろんコヴァルスキ本人。意外とシブイいい男。

    

 父親の建築会社に勤めながらパラグライダーの魅力に目覚めたのが20年ほど前。

 その後、ジャイロコプターの免許を取得すると、彼は上空から撮影した写真の魅力に憑りつかれ、会社を辞めてこうした写真を撮ることに専念するようになります。

 通常「空からの景色」と言えば、地平線や水平線が入った「遠景」に気を取られると思うのですが、彼の視点は『真下』。

 この『真下』と言うのが彼の撮影のキーワードに違いありますまい。

 しかし…『バーズ・アイ』で見下ろした写真たちの何と美しいこと。

 彼がその魅力のトリコになるのも分かるような気がします。

「わたしの写真はすべて飛ぶことを愛しているがゆえに生まれたもの」

 ~とコヴァルスキは言います。また…

「写真は飛ぶための言い訳のようなもの」とも。

 そう…彼は地上では、たった一枚の写真さえ撮ったことはないのです。

 これらの写真は、ポーランドの彼の自宅周辺80キロメートルの範囲を撮影したもの。

 高さは、ジャイロコプターの操縦が安定する150メートルほどの位置から。

 初めの頃はインドや中国へ遠征して撮影していたコヴァルスキでしたが、結局、故郷の風景の原点に帰ってきました。

    

 その理由の一つが、以下のような風景。


 これは、"Toxic Beauty”(毒々しい美しさ)と題されたシリーズから。

 (※右の背景写真も同じシリーズ)⇒

 まさに毒々しいながらも不思議な美しさを醸し出す地上風景ですが、これは鉱山(あるいは工場でしょうか)から流出した廃液が河川へと広がっている写真です。

 著しい規模の『汚染』…しかし、それが生み出す風景には妖しい美しさがあるのも事実。まるで一幅の油絵の如く。

 人類が生み出したこの巨大なパラドックスに想いが強くなるのも、それが愛する『故郷』であるがゆえ。

    

 そしてまた…


 これらの美しい写真もまた、その真実は『水害』という大自然の厄災を『バーズ・アイ」で切り取ったものなのです。

 うむぅ…これもまた、哀しくも美しい。

    

 そして、自然は時に、驚くような表情を見せてくれます。


 季節の移り変わりの中にも…


 霜の季節にも…

 そして、人々の暮らしの中にも…



 家が並んだ写真は、ページをスクロールするとクラクラしますけれど…(笑)

    

 コヴァルスキの写真はどれもこれもが美しい…たとえそれが大いなる"厄災”に絡んだものだとしても。

 彼自身、人類の自然破壊を告発する…というよりも、もっと純粋に『バーズ・アイ』から見下ろす地上の造形のサプライズに感動し、シャッターを押し続けている…僕にはそう思えるのです。

 《配信:2017.1.11》

葉羽葉羽 ニューヨークの「THE CURATOR」サイトのうち、KACPER KOWALSKIのコーナーは コチラ>>

 

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