博物館の夏の特集展についてご紹介します。
7月7日の七夕の日を皮切りに、福島県立博物館では夏の特集展「第二回うつくしま自然展」が始まりました。
4月下旬からの春の特集展「直江兼続展」の開催期間中は、前年同期と比較して入場料収入が2倍を超えるという好評を博したので、今回も二匹目のドジョウを狙いたいところ。
で、今回の目玉とされているのは、絶滅危惧種「イヌワシ」の完全体の剥製。しかし、僕的には何と言っても「冬虫夏草」が面白いのです。
「冬虫夏草」・・いかにも怪しげなこの名前。夏は虫の姿をして活動し、冬になると植物に変化するというまことに奇妙奇天烈な生物でございます。
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イヌワシ
(in 福島県立博物館) |
これは、チベット高原やヒマラヤ地方の高山地帯に生息するコウモリガ科の蛾の一種なのですが、その正体は、幼虫に寄生する菌糸の方。
コウモリ蛾の幼虫に寄生した冬虫夏草菌は、その体内でゆっくりと生長し、夏に地面から生えるのですが、地中にある部分は幼虫の形を保ったままなので、あたかも虫が変化した植物のように見えるのです。
ところで「うつくしま自然展」、会場に行って見ますと、何とこの「冬虫夏草」が180種以上も展示されていたので、おもわず『ええーっ!』
しかも、その全てが福島県内で採取された標本だと言う。
「ちょっと待ってよ、あれってチベットやヒマラヤにしかいない希少種じゃないの?!」と思わず突っ込みを入れたくなるところ。
古来日本では、中国本家で言う冬虫夏草属の真菌ばかりでなく、スチルベラ科の菌など虫に寄生して発生する麦角菌類の総称として「冬虫夏草」という呼び方をしているとのこと。
「なるほど納得」というところですが、改めてズラリ並んだ標本を見渡してみると、いやいや実に多種多様な冬虫夏草があるものです。
これだけの「冬虫夏草」がいっきに一般公開されるなど、めったに無いチャンス。
これは後学のためにも是非とも見ておかなければなりますまい。
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冬虫夏草の展示
(in 福島県立博物館) |
この「冬虫夏草」、漢方薬や中華薬膳料理には無くてはならない材料。四川料理では、下ごしらえしたアヒルの腹に冬虫夏草を詰め、ネギ、ショウガ、紹興酒など加えてじっくり煮込んだ「虫草鴨子」(チョンツァオヤーズ)というスープが有名。
他にも、スッポン、アワビ、雄牛の生殖器と一緒に煮込んだ料理なども・・・まあ、材料からして滋養強壮に効きそうではありますが。
そういえば、10年前ほどに陸上競技界を席巻した中国の馬軍団所属の陸上競技選手たち~董艶梅、姜波、曲雲霞らでありますが、彼女らは、この冬虫夏草エキスを摂取して好記録を残したとされているのですが、本当でしょうか。
何はともあれ、一見の価値はあるシロモノでございました。
《配信:2009.7.15》
葉羽 見ようによっては、いささか気色悪いのですけれど(笑) |