待ち望んでいた2021年8月の新宿文化センターでの二期会の「ルル」を聞き逃したので、今年4月の5年ぶりの再演はどんなことがあっても行こうと心に刻んでいたのだが、どうしたものかまた失念して、気付いたのは1週間前。
ダブルキャスト上演の冨平安希子主演の方を聞きたかったのだが、なんと4月19日(日)14時には同時刻開演の東京・春・音楽祭「マノン・レスコー」の演奏会形式上演のチケットを買ってしまっていた。
となると新国立劇場初日の4月17日(金)18時の回しかなかった。この日は14時から錦糸町で新日本フィルのコンサート(錦糸町トリフォニーホール)のチケットをすでに買っていたので、連チャンになるがこれは自らのルール(コンサート・オペラのライブ鑑賞は1日1公演)を破って、初台の新国立劇場に駆けつけることにした。
金曜日の18時開演で、S席(2万5000円)、A席(1万8000円)、B席(1万5000円)はかなり売れ残っていた。D席(6000円)は売り切れだったので、4階席最前列(C席1万円)で聞いてみることにした。
4階は初めて座るが、声は十分届くし、大編成のオーケストラの音は耳が痛くなるほど直射。オペラグラスがあれば全く問題ない。新国立劇場の音響の良さに改めて感心する。
まあ「ルル」というオペラは、簡単に言うと、ルルというトンデモ女の男性遍歴(レズの女性含む)を扱っている話なのだが、それにベルクが凄い音楽を付けたというオペラ。これを人間の赤裸々な欲望表出と社会構造の矛盾として意欲的な演出家が様々に解釈しているのだ。
残念ながら2幕まで完成させてベルクは急逝。ツェルハ完成の3幕版があるが、今公演は2幕版で最後にベルクの「ルル組曲」を演奏。

東京二期会による解説と新国立劇場公演(4月11日には全体の初日であるカルッツかわさきでの公演があった)のキャストは以下の通り。
20世紀ウィーンの作曲家アルバン・ベルクが、社会の抑圧と人間の欲望を音楽で描き出した『ルル』。
これまで“魔性の女”として語られてきた主人公ルルを、演出家カロリーネ・グルーバーは「社会の犠牲者」として表現。
コンテンポラリーダンサー中村蓉が「ルルの魂」として舞い、彼女の抑圧と解放を進退で表現する。
“ルルは死なない”―ベルクが未完のまま遺したこの作品を、現代の価値観で生まれ変わらせる、東京二期会の挑戦。
■ストーリー
貧民街に生まれた少女ルルは、新聞社の編集長シェーン博士に拾われ、彼の理想の女性として育てられる。
男たちの欲望と幻想の中で、名前も奪われ、役割を与えられながら生きるルル。
愛され、裏切られ、所有され―それでも彼女の奥底には、まだ誰も知らない〈ほんとうのルル〉が息づいている。
彼女が最後に見つめるものは、愛か、自由か、それとも……

カーテンコールの冨平安希子
指揮:オスカー・ヨッケル
演出:カロリーネ・グルーバー
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
<新国立劇場公演>
ルル:冨平安希子(4/17・19) / 宮地江奈(4/18)
ゲシュヴィッツ伯爵令嬢:川合ひとみ(4/17・19) / 豊島ゆき(4/18)
劇場の衣裳係、ギムナジウムの学生:郷家暁子(4/17・19) / 持田温子(4/18)
医事顧問:峰茂樹
画家:大川信之(4/17・19) / 岸浪愛学(4/18)
シェーン博士:大沼徹(4/17・19) / 黒田祐貴(4/18)
アルヴァ:山本耕平(4/17・19) / 澤原行正(4/18)
シゴルヒ:狩野賢一(4/17・19) / 山下浩司(4/18)
猛獣使い、力業師:北川辰彦(4/17・19) / 菅原洋平(4/18)
公爵、従僕:高柳圭(4/17・19) / 市川浩平(4/18)
劇場支配人:金子宏(4/17・19) / 倉本晋児(4/18)
ソロダンサー:中村蓉
とにかく、2幕版ではあるがやっとベルクの「ルル」を見ることが出来た。
ルルを歌手とダンサーで二重に表現するのが今回のカロリーネ・グルーバー演出の眼目だ。最初は煩わしいが、最後は決まっていた。
オスカー・ヨッケル指揮の東京フィルは善戦。響きが生硬で生々し過ぎた。ウィーン風のエレガンスが欲しかったと思ってもそれはナイモノねだりかな。