今年の2月24日金曜日から「プレミアムフライデー」がスタートした。最終金曜日は仕事を午後3時に終了し、余暇を充実させよう、と政府(経済産業省)や経団連(一般社団法人経済連合会)の主導で始まった。
大手広告代理店の新入女子社員が働き過ぎと思われる原因で自殺するという事件が最近あったからグッドタイミングだったのではないだろうか。
「日本人は働き過ぎだ。働き方を見直そう」というスローガンで始められたのだろうが、真の狙いは消費拡大のきっかけになって欲しいということのようだ。
博報堂行動デザイン研究所による20歳から59歳の800人を対象にしたプレミアムフライデーの過ごし方に関する調査では、31.5%が旅行、30.3%が自宅でのんびり過ごすと回答し、この2項目が大きく他を離している。
ついで食事(8.8%)、買い物(7.4%)。こうした中で、消費拡大の恩恵を受けそうなのは、旅行会社、飲食店、商業施設だろう。
とくに若年層離れが進み、中高年層も将来への不安から財布の紐が固くなって、低迷が続く百貨店にとっては失地挽回をするいいチャンスだ。
たとえば松屋銀座では、「普段よりも少し贅沢な体験型イベントを中心に準備いたしました」とのこと。
屋上ゴルフスクール打ち放題(540円)とか高級ワイン4種試飲会(3240円)、日本橋千疋屋とコラボしたジャム&パンの試食会(500円)などでちょっと贅沢なライフスタイルの提案を行っている。
笑えるのは、4階の婦人服売り場の「イケメンギャルソンによるドリンクサービス」。4階に来た客にスパークリングワインを無料で提供するというサービス。イケメンギャルソンと言っても選抜された社員である。
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イケメンギャルソンによる
ドリンクサービス
(松屋銀座)
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もう少し本格的なのが高島屋。ジャズアーティストによるトーク&ライブ(大阪店)、地元シンガーによるライブ(京都店)が開催された。
限定品も用意され、この時期だけのオリジナル福袋は日本橋店で販売された。日本橋店では「3時から市」と題してデパ地下ならではの出来たてグルメが揃えられた。
旅行会社とタイアップした企画もあり、横浜店の小旅行企画「スーツでハワイアンズ」は午後3時に仕事を終え、スーツのまま、午後4時にバスで横浜を出発し、福島県いわき市のスパリゾートハワイアンズで日頃の疲れを癒す1泊旅行。翌日の夕方に横浜に帰着した。
駄洒落好きの大阪らしく、近江牛を使ったプレミアム牛串や高さ10センチのかき揚げなどプレミアムフライデー限定のプレミアムな「フライ」4種類を用意したのは大阪店。
この他、「お父さんの株上げ手土産」企画では、お父さんがこれをお土産にして夕食前に帰ったら家族が喜びそうなスイーツが新宿店、柏店、玉川店などで豊富に揃えられた。
上記2店以外で私が個人的に注目したのは、主に病院が提案したプレミアムフライデーに泊りがけの人間ドックやガン検診を受けようという企画。
将来が不安で消費を控える中高年も「健康」には出し惜しみしないだろう。こうした方向性では、「自分磨き」的な企画は今後出てきそうである。
消費拡大のためには藁をつかみたい政府と経済界にとっては、プレミアムフライデーは悪くない企画だと思うが、最初の今回実施企業は全体の2~3%だったという。
せめてこれが20%まで広がらないと効果が出るのは難しいのではないか。地道で粘り強い普及活動が必要だろう。
PS 現在6月に入り、2月、3月、4月、5月と4回のプレミアム・フライデーがあったが、月を追うごとに話題にもならなくなって、これは終わりそうですなあ。
(2017.6.13「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
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