じっと耐えて、それぞれのニュースについて、前編と後編に分けて簡単にコメントしてみた。これを読んで、何か光明が見えてくるなんてことがあるのだろうか。そんな僥倖があったとすれば幸甚である。
1.長らくSPA(製造小売りアパレル)企業に痛めつけられてきたアパレル卸売り企業だが、このところの「アパレル不況」に音をあげている。
店舗閉鎖・不採算ブランド廃止・人員削減で対応しているが、これも、生え抜きの人物ではなく、MBA保持者やファンドといった合理的経営者をスカウトして、その任に当たらせている。
もちろんよほどの天才でもいなければ同族経営で現在のアパレル不況をサバイブするのは難しい。
イトキンの再建を任されたのは、倒産したヨウジヤマモト社の立て直しに成功したインテグラルというファンドである。
2.SPA企業にも、優劣がつき始めている。とくに世界第3位のGAP社の成長には陰りが見られる。同社の売り上げ最大ブランドはGAPではなく「オールドネイビー」だ。
このあたりに米国の格差社会を痛感するが、その「オールドネイビー」が日本撤退(全53店舗閉店)を決めた。これは、なかなかにショッキングな事件である。2つの意味で。
ひとつは赤字事業をやる余裕がGAP社にないこと。もうひとつは日本市場の可能性に対してNO!だということ。
3.やはり銀座は日本のヘソだということを痛感させられた。小売り施設のオープン、建て替えの話題が集中した。個人的に一番印象的だったのはSONYビルの建て替えであった。
4.この流れはしばらく続きそうである。とにかく店が多すぎる。商品が多すぎる。スーパーの跡地に救世主のように出店しているのはドンキホーテである。
2016年6月期決算で27期連続増収増益を達成した年商7559億円企業。品がないからみんなに馬鹿にされるがいつの間にか凄い小売企業になっていたのである。
5.中国政府は4月1日から高額品への関税率がアップして、中国富裕層の「爆買い」がストップ。恩恵を受けていた松屋銀座、伊勢丹新宿店などが売り上げを大きく減少させた。「爆買い」をアテにして作ったデューティ・フリー売り場では閑古鳥が鳴いている始末。
6、7、8、9、10:ファッション&アパレル不況は日本だけではないことを実感させるニュースである。ラグジュアリー・ブランドからSPAブランドまで売れなくなっている。一時はヤングを中心に人気のあったカジュアルウエアのエアロポステール社も今年倒産している。
11.ファーストリテイリングは2020年年商5兆円の野望を実現可能な3兆円に修正したが、日本国内では「ユニクロ」の伸びは期待されておらず、それに代わってエースに躍り出たのが「GU(ジーユー)」である。
最近では「GU」1兆円構想まで飛び出している。例えばGAP社でも、一番売れているブランドはGAPではなく、5年ほど前からGAP社で最も低価格な「オールドネイビー」になっている。
「GU」はファッション性が高く、「ユニクロ」の50~60%で買えるファストファッションである。昨年ガウチョパンツで大ブレークしたが、今年はガウチョのスカート版のスカ―チョがまたまたヒット。
(※右の背景画像:スカーチョ)⇒
このほかにもスカートとパンツを合わせたスカンツ、スカートとレギンスを合わせたスカッツなどもヒットした。いずれもスカートで、トレンドがフェミニンに流れている証拠だと言われているが、どうなのだろうか。
12.東京デザイナーのブランドで、差別化を図っているセレクトショップのTOKYO BASE(旧社名ストゥディオス)は、2015年年末に上場したが、その後業績、株価ともにうなぎ上りだ。
社名変更が「運」を呼び込んだとも言われるが、若き社長のもと新しい可能性を感じさせる企業なので取り上げてみた。
もうセレクト業界でも新しいタイプの企業の登場が待たれているということだろう。