世界のラグジュアリー・ビジネスを牛耳る男はLVMH(モエヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループのベルナール・アルノー社長。
LVMHグループは、「ルイ・ヴィトン」「ディオール」「フェンディ」「セリーヌ」「ケンゾー」「ジバンシイ」などのファッション&レザーグッズブランドだけでなく、「ヴーヴ クリコ」「モエ・エ・シャンドン」「クリュッグ」などのシャンパンなども傘下に擁する一大ラグジュアリー・コングロマリットで、2006年の年商は2兆5,400億円。
最近はフランスの大手新聞社の「レ・ゼコー」の買収をした。
ほとんどのブランドが、買収で手に入れたものなので、「買収王」でもある。このアルノー氏を、日本で最初にインタビューしたのが私。
1985年だったかしら。まだ最初の獲物である「ディオール」を買ったばかり。
場所は帝国ホテル。
奥方も、今のエレーヌ夫人ではなく、前夫人だった。
この前夫人は気さくな女性で、持参したワードローブまで見せてくれた。
ピアノを弾くアルノー氏は、現在でも防音が完璧な帝国ホテルに宿泊する。
ちなみにエレーヌ現夫人は、もとピアニスト。
たしかCDも出ていたなあ。
そのときのインタビューで印象に残っている言葉は・・
「ディオールという単語、それは私にとって魔法の響きだった。」
この人本当に面白い人物だと心底思ったのが、プラダのパトリツィオ・ベルテッリ=最高経営責任者だ。
言うまでもなくプラダのデザイナーでもあるミウッチャ・プラダの夫君だ。
イタリア人らしく直情径行で気が短いが、頭の回転も抜群に速い。
中央通りのプラダ銀座店のオープン時のインタビューだった。
「このプラダ店の前は、ここにセフォラ(LVMHグループの化粧品専門店チェーン)がテナントとして入っていたが、1年ももたずに閉店し、セフォラも日本市場から撤退した。そこに、店をオープンすることに不安はないのか?」
~という私の問いに、ベルテッリ氏いわく・・
「いいかい君、歴史というものは、
いつでも死者の上に築かれるものなんだよ。」
インタビュアー泣かせの人物は少なくない。
海外ではアレキサンダー・マックイーン、日本では「コム デ ギャルソン」の川久保玲ということになるのか。
川久保女史、いまだに写真はNG。
(※作品:右の背景画像)⇒
とにかく、リップサービスというものは皆無で、余計なことは一切言わない。
「来年はいよいよ2001年、21世紀に入りますが、何か抱負は?」と尋ねると・・
「別に。1年は、皆同じ。特別な意味はない」という調子。
彼女がインタビューでよく言うのは・・
「とにかく、求めているのは『強さ』ということ。それがないデザインはダメ。」
とにかく饒舌なデザイナーはジャンポール・ゴルチェだ。
駆け出し記者だった80年代の前半に一度だけインタビューしたことがある。
まだ大家ではなかったから、かなりリラックスしてインタビューに応じていた。
場所は彼が講演をした東京モード学園の一室だった。
「僕には素敵な叔母さんがいてね。この叔母さんがとっても艶っぽくてね。ドレスの肩口から、わざとブラジャーのヒモを見せて、ダラしなくシドケなく着こなしてるわけ。こういう感じなのよ、僕が大切にしているのは。」
たしかに、このダラしない着こなしは、その後20余年間街を歩く女子たちに受け継がれているのである。
(2008.1.21「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)
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