<soul-79> 他人の裏側
明は、何が何やら分からず、足が勝手に進んで、残った生の人間のバンドマン達の方へは行かずに、倉庫の中央にスポットライトに照らされる様に残された真野の方へ吸い寄せられた。
あの仕切りは覗いてはいけないのだろう事は、明にも察知できたが、そこで何をしているのか、気にならないと言えば嘘になる。
しかし真野を一人にしておくのも気が引けたのだ。
真野が、心細げに遠目でも見えた気がして、明は恐々様子を伺う様に真野の眼を見ると、予想に反してその眼は笑っていた。
好奇心と高揚も加算してキラキラ輝いている。
「何?」
思わず訝る明に、真野はニヤリと微笑むと
「面白いもん見れるよ。ただ、最初だけすっごい集中力必要とするんだって。
静かにしておかないと、福喜さんに叱られるよ?
何話してたの?どうせ説教だろうけど。
あんたが相手じゃ、小言も言いたくなるよね」
「・・・ふーん・・・」
気の無い相槌で明は、福喜達の事はこの際置いておく事にした。
今は眼の前のこっちが先に問題だ。
明はなるべく、自分らしくないと知りつつも、嫌味に取られないように気遣いながら、腕をぎこちなく組んで、さりげなさを装い口にした。
「あんたさあ、何で・・・ 生霊やってんの?彷徨ってんの?」
キョトンとした真野は、質問の意図が分からないとばかりに、スラッと答えた。
「・・・面白いじゃない? 霊の方が。 他人の裏側とか見れて」
「へー・・・・ じゃあ、人のいいとこが見られるんだな。それはなかなか」
「バッカじゃないの!?
人間なんて一歩裏入ればみんな同じよ!!
自分の事ばっかりで 平気で嘘つくし・・ ・・・その点、ここの人たちは
幽霊は裏表無くて付き合い易いけど」
「あんた・・・?矛盾してんじゃん」
「何が!?」
「人の裏見て楽しいんだろ?
それなのに裏が無い連中と居るとホッとするって」
「!?何が言いたいの?
あんたにあたしの何がわかるって!?」
明は、くどくなるのを覚悟で、言い募った。
【2014.6.11 Release】TO BE CONTINUED⇒