<soul-55> 明の服装
ほとんど目をつぶり、顎を上げてお手上げ状態の明の微かに開いていた目の端に、くっくと笑いを噛み殺しながら、幽霊連中には混ざらずとも、嬉しそうに前方斜めに体と顔を傾けている福喜が入って来て、福喜の癇癪が起きないのに、やっと合点がいった明は呆れ口調で話しかける。
「何か段々わかってきた。このメンバーまとめんの大変でしょ?
面白がる余裕無いと、とてもじゃないけどできねーわ」
福喜は鼻でまだ笑いながら、
「わかるかい。あたしゃ気に病まない方だが、しかし大変は大変だね。
ま、リーダーできるのなんてあたし位のもんだろうね」
明は素直に頷きながら
「ごもっとも」
とうなだれる。
福喜は悪戯っぽくニヤッと口の端で笑うと手を叩き、一同を現実に引き戻す様に空気を一喝する。
「あんた逹!!おふざけはこれまでだ!!
歌手がさっき、後小一時間で着くって言ってよこしたから、
もうすぐ本番だと考えた方がいいね!!
到着前に一報入れる様に孫に頼ませといたから、
あたしらは連絡来たらすぐチェンジュするからね!!
それまでは……そうさね、もうここまでこぎつけたんだ。
焦るこたないさ。自由にやっとくれ!!」
明は目と口を驚愕で丸く瞬時に見開き
「今までも十分!!自由にしてただろうが…あんたら……」
と開いた口が塞がらない。
しかし、それはそれで自由を喜んで、ワイワイガヤガヤ相も変わらず騒ぐ幽霊逹に、もう今度こそ本当にどうでもいいと腰砕けでよろめいて、端っこの方でおとなしくしていようとふらつく明を、突如女幽霊、露子と希和子と民に、何故か真野までがくっついて取り囲む。
ギョッとして立ち止まる明を円陣を張って囲むと、女性陣は
「問題は明君の服装ですのよねぇ。
スーツは宜しいけれど、タイが無いようじゃあ」
露子がしかめっ面で顎に指を当てて、明の胸元を眺めれば、希和子はおっとりと
「助八さんどこへやったかわからなくなったそうなの…
困ったわねえ…もう一度探してみます?
見つからないと明君自体も、生活上困るでしょうし」
民はフランクに
「んー、でもそこまでカッチリ決めなくても、
シャツ姿でもいいんじゃないですか?
若いから何でも決まるんじゃ」
何の話だと目をくるくるさせて戸惑っている明に、明の背後で陣を張る真野はシラケてますと主張する様に、
「若けりゃいいってもんじゃないっすよ?
みんなだって若くなるんだし、見劣りすんのは当然じゃないですか?
ほっときゃいいんです。ほっときゃ」
明は何事の談義かはわからなくとも、真野にけなされたのだけは察知して振り返りながら
「何だよ!!何か文句あんのか!?」
と真野限定で食って掛かる。
【2010.3.14 Release】TO BE CONTINUED⇒