<soul-19> 仁王立ち
重そうにしながらも福喜が腰を上げると、幽霊連中に囲まれて押し問答を繰り返している明の方にやって来る。
まだツテは食い下がっていて、説教と言うよりは自分の経験からか、含蓄の込もった言いっぷりで、
「兄ちゃん。無理なんてえのはやってみてから決めるこったよ?
男がそんなんでどうすんだい!!家族背負って立てないよ!?」
明はムキになると
「俺所帯持ちじゃねーもん!!」
今まで口を挟まなかった民が、
「額面通りの意味をツテさんは言ってるんじゃ無いと思うわよ?心構えよ。
独身でもいざと言う時は何であれちゃんとやって行こうと思わなければ、
家庭を持った時にどうするんだって」
ツテは自分で言っておきながら感心して目を見開くと、
「へえー…そうだったのかい。そんな意味があったんだねえ」
佐山が、妻である民の意見との相違に驚いて、思わず声を荒げる。
「ツテさん!?今!!あなたが!言いましたよ!?」
「そこまでは考えとりゃせんかった」
何の遠慮も卑屈さも無く、あっさりとツテは認めると、欠けた前歯をしっかり出してにへら~っと笑う。
明は明で、やってられなさ全開を閉じる風も無く、よりムキになって
「あんたらに議論される筋合いは全くありませんから!!俺は!!
俺でせいいっ」
とそこで突然言葉を切る。
それは福喜が真っ直ぐに自分を指差して、皆の前に仁王立ちしているのを発見したからだった。
何の意味の指差しか、皆が一瞬息を詰めて見守る中、明は戦々恐々とした面持ちで福喜を睨んだ。
その時明はある覚悟をした。
しかし………福喜は指を下ろすと冷静な口調で
「黙ってな小僧。お前はとにかく何も口応えしない事になってた筈だよ。
無礼も非礼も許してやるが、これ以上口応えを続け様ってんなら、
こっちも考えがあるってもんだ」
グッと唾を呑んで、明がやっと一言
「………どうすんだ」
「どうするって?そりゃあね………」
【2008.9.22 Release】TO BE CONTINUED⇒