一世一代のはまり役。
そんなものがある役者さんも稀ですが、それがある芸人さんも又稀。
さんまさんの昔のTBSドラマ、「好色一代男」が一世一代、名はまり役だったと私の中で位置づけされているのですが、対を成してこれ又一世一代のはまり役・・・あえてビートたけしと呼ばせてもらうなら、日本映画「ほしをつぐもの」が私の北野武のはまり役。
〜と言うのもおこがましいほど、私的、洋画・邦画通してのNo.1の映画が実はこの「ほしをつぐもの」。
舞台は現代と第二次世界大戦中の日本の疎開先から、東京に戻ろうする少年少女が出会ったマタギのおじさん、それがたけちゃん。
ぶっきら棒に、親切に厳しく優しく接してくれるおじさんは過酷な少年少女たちの導き手の様になくてはならない存在になりますが、別れの時を迎え、それぞれ山と東京へ帰って行きます。
そして迎える過酷な運命。
唯一辿り着いた少年が大人になり・・・演じるのが田中邦衛。
で、すさまじくいいのはありますが、何よりも一命を取り留め、おじさんを河原で見付けた時の、そのおじさんのたたずまい・・優しさ・・存在。
全てにおいてここまで泣かせる意味不明な圧倒感は、この映画が随一。
そのおじさんが北野武であり、ビートたけし・・・この作品もプロデュースしています。
ただ監督業は私はあまり好きな作品は無く、演者としての北野武を評価していますが、それにしてもこの役以上に圧倒的に優しく、他にない存在感は無いのです。
田中邦衛の「やっぱりコメが好き」。
これもまた絶妙で、ラストのあの空間はおとぎ話の様で夢の様で、郷愁と、それでいて幸せの匂いに交じった哀しさの様で泣かずに見れません。
今福島の状況はある人に言わせれば、戦争の最中。
我が家もただならぬ非常事態中は続きます。
だからこそこのおじさんが余計に染みる現在かもしれません。
ビデオしかまだなく、DVDになるのを一番望む映画ですが、あのおじさんのたたずまいは、多分あの時のたけちゃんであって存在したもので、今もう一度演じたら違うものになるかもしれません。
映画は、本当にその時の息遣いが残るものだと思うのです。
思想や何やらまでフィルムに焼き付きます。
今のこの時は、辛くて思い出すのもはばかられる未来かもしれませんが、それでも今が合ってなお先がある、そう思える時間を焼き付けて行けたら、あんな映画の様に優しさが込み上げるのかもしれません。
Written by Akio
(2012.4.2up)
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