<Dream-01> あたしを呼ぶ声
暗い………まるで闇の中の更に暗闇に落ちた様だ……上も下も夜も宇宙も分からない………そこに一筋の明かりが微かに射す。
その向こうをよく見ようとすると、明かりの周辺だけが昼の様にぼんやりとだが太陽が射している。
しかし、誰かが太陽を遮って立っている。
誰?と思っても、逆光で顔は見えない………その人物が何かを発した。
「………実多果」
殆ど聞き取れない中で、それだけがはっきりと届く。
漠然と自分の体も溶かす闇に、意識だけが漂っていながら、その懐かしい声が何なのかは分からない………誰?
心で形にする。
「あたしを呼ぶ声が聞こえる……………
どうし様もなく懐かしいのに…………
あたしは、応える事ができない……………」
× × ×
ゆっくりと目を開けて、暗闇から現実に返って来た。
心の中で言葉にして反芻する。
「いつも……いつも」
「ミイちゃん!!」
夢の泡が弾ける様に気が付いて、柿崎の方に振り返る実多果(みたか)。
随分長い事、夢の反芻をしていた様に感じたが、実際は1・2分の出来事だったらしく、ボーッとしていた姪の様子に、今更感じる所も無いと言った調子で柿崎の叔母は不服を申し立てた。
「こんな時までボーッとしないでちょうだい!!
駅のホームだったら、押されて電車に引かれちゃうわよ!!」
やはりわかっちゃいないな。
実多果は心の中でひとりごちた。
こんな時だからこそ、現実逃避でもしないとやってられないのだ。
しかもまるっきり関連の無い事に気を取られていた訳では無い。
と口にしようかとも思うが、やはり言わぬが何とか。
どうせ言っても、この叔母には理解は出来ないと……いや、誰にも理解なんて出来ない。そう腹をくくると、実多果はムッツリしてそっぽを向いた。
叔母はそんな実多果の反抗的な態度など、露程も気に止める事無くマンションの通路を部屋の号数を確かめながら先に急ぐ。
実多果は渋々叔母の後を付いて歩いた。
実多果の髪が歩く振動で上下に大きく揺れる。
実多果のヘアスタイルは、驚くほどのカーリーに近いスパイラルパーマのかかった爆発ヘアで、その髪色はハッとするほど透き通ったオレンジに染め上げてあり、頭の先から肩の辺りまでワサワサと揺れていた。
【2020.1.27 Release】TO BE CONTINUED⇒
|