岸波通信その140「人類の叡智に学ぶ4」

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岸波通信その140
「人類の叡智に学ぶ4」

1 リーダーの条件

2 部下の育て方

3 経営者は「夢」を語る

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  Learns from Intelligence of the mankind 4 【2017.12.31改稿】(当初配信:2007.4.29)

「社員が『これをやりたい』と手を挙げたら、基本的にすべてやらせる。たとえ失敗してもノウハウが残る。」・・・鴻野名人の『人材育成箴言集』より

 通信読者ではないのですが、最近のお友達の一人にKさんが居ます。

 ある日Kさんは、一綴りの書類を持って僕のところに来ました。

 僕に読んで欲しいというのですが、いったいこれは…?

 タイトルは「あたりまえのことをあたりまえに」とあり、どうやらこれは“箴言集”のようであります。

大英博物館

 これは、これまでに感銘を受けた言葉を書き留めたものだとのこと。

 うむぅ…まるで橋本先輩の「人生ノート」や、MIZO画伯の「神との対話・ノート」のようではありませんか。

 何故か僕のところには、こういう情報が集まってくるようですね。

 ということで、珠玉の言の葉たちを集めたこの「人類の叡智に学ぶ」シリーズ・・・今回は、Kさんの箴言集からいくつかをご紹介しながら、僕なりにコメントをしてみたいと思います。

 (それにしても、どうして僕に? …もしかして通信の“隠れ読者”だったのでしょうか?)

 

1 リーダーの条件

   バカになれる人ほど人望が厚い

 中国に「大智若愚」という言葉があります。

 これは、「知恵のある者は愚か者のような外観をしている」という意味ですが、本当に優秀な人物は能力をひけらかしたりしないもののようです。

 人間と言うものは不思議なもので、常にパーフェクトでミスを冒さない上司というのは逆にとっつきにくく、本音の付き合いができにくいのではないでしょうか。

 前漢の高祖劉邦は一見すると馬鹿に見えたそうですが、本音で話せる柔らかな雰囲気と負けても負けても諦めないしぶとさで部下の人望を集め、最後にはライバル項羽を打ち負かしました。

 どこか弱点があるくらいの方が、人間関係がうまくいくのかもしれませんね。

前漢の高祖劉邦


 

 自分が果たすべき責任を真っ先に考えない人は本当のリーダーではない。

 ガキ大将の言動には、無意識のうちに「俺が皆をまとめなければ」という意識が働いている。

 誰のこととは申しませんが、会社が不始末を起こした場合に、「自分は知らなかった」など言うトップほど情けないものはありません。

 また、「部下が」、「秘書が」という言い訳も醜態の極みだと思います。

 僕らの子供の頃に居た“正義のガキ大将”は、確かに自分の事より先に仲間の事を思い遣っていたという記憶があります。(ねぇ、ナカちゃん?)

 人間同士、大切なものは“心の絆”であって、決して「欲得」や「カネ」などではないでしょう。

 そういえば、1ドル札に登場するベンジャミン・フランクリンは、「カネしだいで何でもできるという意見の持ち主は、カネしだいで何でもやると疑われるべきである」と言っています。

 含蓄のある言葉です。

一ドル札

(ベンジャミン・フランクリン)


   成功しても「なぜ」、失敗しても「なぜ」。

 何かに失敗した折に、その原因を考えることなら誰にでもできます。

 しかし、成功した時に冷静に勝因を分析することは、なかなか出来ないのではないでしょうか。

 やはり、リーダーとして大切なのは“心の余裕”なのでしょう。

 そういえば、僕の好きな“もみじ食堂”の壁には、こんな色紙が掲げてありました。

 「程ほどの余裕。

  程ほどの笑い。

  程ほどの稚拙。」

 ~なんとも素敵な言葉ではありませんか。


   厳しさ七分、情三分。

 飼い犬の散歩をする時に、「いつも繋がれてるから、たまには自由にさせてやろうと」などと勝手気ままに歩かせることは、決して優しさとは言えないのだそうです。

 そういうことに馴れた犬はどんどん我が侭になり、遂には飼い主にも吠える自制心のない犬に育ってしまうそうです。

 きちんとコントロールし、ルールを守りながら公道を歩くと言う“節度”を教えるのが良い飼い主なのです。

 ただし、良い教育をするためには厳しいだけではダメで、同時に愛情も必要だということですね。

 …と、待てよ。うちのカミサンが僕をないがしろにするのは、もしかして優しくし過ぎた?

(それとも、躾けられてしまったのか。うむむむむ…)

犬のブリーダー

犬のブリーダー

←厳しさ七分、情三分。


   業績を長期にわたって維持するには、「正しい勝ち方」をすること。

 「天網恢恢、疎にして漏らさず」という言葉があります。

 悪事は成就しないことの例えですが、食品の不当表示、欠陥車、家電の不良部品、ヤラセ…国民の安全・安心をないがしろにする商法は必ず痛い目にあうようです。

 目先の利益だけを追わず、倫理観を失わないようにすることを肝に銘じましょう。


   前例、前例、いつまで前例。時期尚早、時期尚早、いつまで時期尚早。

 前例に従うこととすれば思考停止することができますし、時期尚早と言えば問題を先送りすることもできます。

 「男女別姓」の問題や「女性の再婚禁止期間の見直し」などは、いつまで“時期尚早”なのでしょうか。

 “前例踏襲”と言えば、意外な事実があります。

 人体を模した彫刻を白い大理石の色のままにするのは何故でしょう?

 これは、18世紀の著名な考古学者ウィンケルマンが「古典彫像の本質は色には無く構造にあり」と論じて、遺跡から掘り出されたギリシャ・ローマの彫像に色を塗らせなかったのが前例となったものです。

 ところが、これらの彫像が造られた当時は、ギリシャ・ローマの写実主義に基づいて、ちゃんと肌色に塗られていたのです。

 しかし、ウィンケルマン以降、誰も剥げ落ちた色を元どおりに塗り直そうとは言い出せなくなり、現代では、新しく彫る場合でも色を塗らないのが常識となってしまったのです。

ホーキング博士

ダヴィデ像

(ウフィツィ美術館)

←元は肌色でした。


 

2 部下の育て方

   失敗するのが分っていても本人がダメだと気付くまでやらせることも会社の財産。

 失敗をすることは、人間が成長するための大きな契機になります。

 もちろん、「理」を説くだけで理解できる人材なら、その必要はないかもしれません。

 でも、「失敗」を実体験するということは、やはり“経験の刻まれ方”が違うのです。


   能力主義・成果主義VS終身雇用・年功序列

 日本の伝統的な終身雇用・年功序列を否定し、米国型の能力主義・成果主義を導入したことで、皮肉を言えば、米国型の「格差社会」も見事に実現されてしまいました。

 この言葉の記述の後には、Kさんの「成果主体の成果主義でやる気などでるわけがない、数字だけで表れる成果だけを人の評価にするのなら、先輩だって後輩にノウハウを伝えないし、そんな職場で人が育つはずがない。」というメモが入っています。

 なるほど、たしかに…。

 岸波通信「タイム・ホライゾンの闇」にも書きましたが、組織人は、自分がその担当を務める間だけの短期的な成果を挙げることにやっきになるため、どしても難しい問題は先送りされてしまうのです。

 もちろん、全く成果を度外視した“お座なり仕事”がいいはずも無く、要は“短期成果主義”に捉われないことでしょう。


   誰が正しいかではなく、何が正しいか。

 最近交代した僕の新しい上司も挨拶などでよく口にしている言葉です。

 とかく、ソリの合わない人物やミスを繰り返す部下の言葉は軽んじてしまいがちですが、三国志の曹操は「男子三日会わねば括目して相対すべし」と言っています。

 これは、「人間は成長する生き物なので、三日前と同じ(駄目な)人物だと考えず、謙虚に言葉を聞くべし」という意味です。

 言葉を話した人物への先入観を捨て、主張の内容を“是々非々”でよく吟味することが大切でしょう。

 そこには、思わぬ視点が潜んでいるかも知れないのですから。

ホーキング博士

曹操

(「蒼天航路」より)

 新しい上司が、もう一つ、よく口にする言葉に「議論は波打ち際まで」というのがあります。

 イングランドには、「議論はいかに熱く戦わせてもいいが、いったん外に打って出ると決まった場合には、一丸となって打って出るべきだ」という考え方があるそうです。

 含蓄のある言葉です。

 さて、この日本のマスラオ達は、そういう“ジョン・ブルの精神”を持ち合わせているのでしょうか。


   バカと言って喜ばせる。ありがとうと言ってけなす。

 “バカと言って喜ばせる”ためには、お互いの間によほどの信頼関係がないと成立しません。

 逆に、気持ちのこもっていない口先だけの“ありがとう”は、敏感に悟られてしまうでしょう。

 そっか、大和伸一が朱雀RSに、いつも馬鹿と言ってるのは、二人が親友である証しだったのか・・・。


   好きな仕事をしている時は疲れないが、嫌いな仕事をしている時はもの凄く疲れる。

 これは、誰にでも経験があるでしょう。

 この言葉の後には、Kさんの「仕事は面白い…その気持ちにさせる」というメモがあります。

 これこそ、良き上司と言えるでしょう。

 ただし、部下に「仕事が面白い」と思わせるためには、まず自分自身がそうならなければなりません。


   人の好意や思いやりを感じる心の持ち主、感動した体験のある人を採用。

 最新の企業採用の面接技法は、「これからどうしたいか」ではなく「これまでどうしてきたか」という過去体験を聞くスタイルに変化しています。

 「これからどうしたいか」なら、マニュアルどおりに答えれば済みますが、「過去にどんな障害に出会い、その時にどうやって克服したか」と実体験を問えば、嘘は通用しないからです。

 だから、「感動体験」とは、決して「ナントカの本を読んで、あるいは映画を見て泣きました」などという事を聞きたい訳ではないのです。

(正しい面接技法を習得していない上辺だけの面接者は、その答えでも「ああ、そうですか」で終わってしまうでしょうが。)

 でも、“感動することが出来る心”というのは大切ですね。

 自分の感動や夢を熱く語れる人間というのは、とても魅力的です。

 さて、貴方は夢を語れているでしょうか?

ユニバーサル・デザインの改札口

採用面接風景


 

3 経営者は「夢」を語る

   経営者は「夢」を語る。

 結局、人間と言うものは、生活のためという打算やノルマだけではいい仕事などできないものです。

 「社会をよくする」とか「誰かを幸せにできる」という仕事にこそ打ち込めるのです。

 経営者たる者、社員にそういった「夢」を語り、大きな錦の御旗を掲げねばなりません。

 そうすることによって、社員のモチベーションは格段に上がるはずです。

 また「努力する者は夢を語り、怠ける者は不満を語る」という言葉もあります。

 いつも不満をかこっている上司になど、誰も付いて行こうとはしないでしょう。

 NHKの人気番組であった「プロジェクトX」では、幾多の困難を乗り越えて大きな夢を成就させたストーリーが紹介されました。

 友人のイプセ君は、かつて僕にこんな事を言いました。

「中高生に修身や道徳を教えるよりも、プロジェクトXのバックナンバーを全部見せた方が、よほど人間性や公共心を育てられるんじゃないでしょうか?」と。

車椅子介助

プロジェクトX

(NHK)

 僕も同じ考えなので、大きくうなずいたものです。

 では、僕にとっての“仕事の夢”とは何か? …あるんです、実は。

 かつて僕は、空港を作り育てる仕事を担当していました。

 しかし、僕が担当したのは開港した直後からでしたので、初便のフライトは目にできなかったのです。

 国が自ら造る場合とは違い、地方空港を造るということは様々な困難が伴います。

 位置の選定、財源の確保、地元調整、国の認可、利活用…何にも増して、空港そのものより、航空路線を誘致するということは並大抵のことではないのです。

 僕の尊敬する前任のAさんは、休日も取れない激務の中で自らの身体を壊しながらもその困難を克服し、その開港日を迎えました。

 数万人の人々が見つめる中、その初便は雲を裂いて雄姿を現しました。

JALの赤い鶴

 テレビ局のアナウンサーが興奮した声で叫びます。

「見えました!

 今、日本航空の赤い鶴のマークが福島の地に初めて降り立とうとしています。

 赤い鶴が・・赤い鶴が・・・」

 しかし、Aさんは、その赤い鶴を見ることはできませんでした。

 その時、彼は万感の想いがこみ上げて、男泣きに泣いていたからです。

 その仕事に携わった多くの人々も同様でした。

 その仕事を受け継いだ僕は新しい仲間達に、「今度は悲願の“国際航空路線”を実現して、俺たちが泣こうじゃないか」と言って三年間頑張ってきました。

 しかし、悲願の国際線初便が飛んだのは、僕が会津に転勤して間もなくのことでした。

 だから、今度こそ…

 誰も出来なかった困難な仕事をやり遂げ、仲間たちと一緒に男泣きに泣きたいと思っています。

 

/// end of the “その140 「人類の叡智に学ぶ4」” ///

 

《追伸》

 Kさんのノートの中に、まめしば嬢が好きな言葉と同じものを見つけました。

 いわく…「生きているだけでまるもうけ」

 いるんですね、同じ考えの人が。

 でも、この言葉は、実は僕にこそふさわしいのです。

 僕は、今でこそ丈夫になりましたが、生まれた時には虚弱児でアチコチに機能障害があったため、医者から「この子は三歳まで生きられない」と断言されたのだそうです。

 だから、今も元気でいられるのは、神様がくれた“オマケの人生”だと思っているのですよ。

 今回のスペシャル画像は、前半で出た高祖劉邦にちなんで、そのライバルである項羽の妃“虞美人”です。

 

 では、また次の通信で・・・See you again !

虞美人

虞美人

←劉邦のライバル項羽の妻。

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To be continued⇒“141”coming soon!

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【岸波通信その140「人類の叡智に学ぶ4」】2017.12.31UP

 

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