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「COOL!」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2009.2.20
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 さあ、みんな
 “つづき”をはじめよう---。

 そうです、超・話題作「20世紀少年」三部作の第2章「最後の希望」、遂に登場であります。

カンナ(右)

カンナ(右)

(平愛梨)

(C)2009 映画「20世紀少年」製作委員会

 浦沢直樹の原作コミック「20世紀少年」は、平成13年度の第25回講談社漫画賞(一般部門)を受賞、続く平成14年度には、第48回小学館漫画賞(一般向け部門)を受賞した名作。

 さらには、2008年度に解決編である「21世紀少年」も含めて、わが国の最も著名なSF作品文学賞である「星雲賞」(コミック部門)まで受賞するという快挙を成し遂げました。

「20世紀少年」が22巻、「21世紀少年」が上・下巻というこの大河コミックは、多くの熱狂的なファンの心をつかんでいまして、第1章の興行成績を見極めるまでもなく、当初から3部作として制作されるという異例のスタートを切ったのです。

 前回のラスト、「血の大晦日」事件の大スペクタクル・シーンに続いて、今回はどんな展開を見せるのか?

 さあ、その内容は?

 

 20世紀少年の第1章は、主人公ケンヂが少年時代に秘密基地で書いた「よげんの書」のストーリーに沿って、現実に「人類滅亡計画」が進行する恐怖を描きました。

 そして、そのラストでは、人類滅亡計画の黒幕であり、「友民党」を組織して日本政府機能を乗っ取った謎の教祖である「ともだち」が、ウイルスと巨大ロボットで首都を破壊した「血の大晦日」事件が起こります。

 今回の第2章では、「血の大晦日」事件の爆心地で「ともだち」と対決し、以後消息を絶ったケンヂの姪カンナが主人公となります。

 このカンナ役を務めた平愛梨ちゃん、なかなかキュートで、カンナのイメージともかなり近かったです。

 もっとも、浦沢直樹の原作コミック「20世紀少年」のキャラと酷似した俳優をズラリ揃えたこの映画、そもそもその辺が選ばれた理由かもしれません。

 何と言っても、カンナ役のオーディションに参加した8000人もの応募者から抜擢されたのですからね。

カンナ(左)

カンナ(左)

(平愛梨)

(C)2009 映画「20世紀少年」製作委員会

 さて、映画の舞台は2015年。

 2000年に起こった「血の大晦日」は、ケンヂが率いるテロリスト一派が引き起こした事件だとされています。

 それに対して、真の黒幕である「ともだち」は、ケンヂ一派と果敢に対決したヒーローとして国民から崇められ、今や押しも押されぬ世界的実力者となりました。

 ケンヂの仲間達は、ある者は投獄され、ある者は地下に潜り、またある者は正体を隠して生きることを余儀なくされています。

 ケンヂの姉キリコ(黒木瞳)の娘で、姉が失踪後ケンヂに面倒を見てもらっていたカンナは、ケンヂが消息不明となってからは、その同級生の一人ユキジ(常盤貴子)に育てられて高校生に。

 ユキジから事件の真相を教えられている彼女は、いつの日かケンヂに代わって宿敵「ともだち」の打倒をすることを夢見ながら、心のどこかで叔父ケンヂの生存を信じているのでした。

オッチョ(右)

オッチョ(右)

(豊川悦司)

(C)2009 映画「20世紀少年」製作委員会

 この映画で描かれている2015年の日本、「ともだち」によって洗脳されてしまった日本の風景は、未来社会というよりも昭和に回帰したノスタルジックな姿で描かれています。

 この風景、「Always 三丁目の夕日」で描かれた町並みや「K20怪人20面相・伝」のレトロなテイストとも共通するものがあって、そうした時代を記憶にとどめている世代にとってはたまらないところです。

 まあ、映画や音楽、さらにはコミックでも、現代日本のヘビー・ユーザは数的に多い中高年ですから、戦略的にターゲットにしたとも考えられますね。

 待てよ・・・この映画を作った制作委員会のメンバーそのもが、浦沢直樹の同世代なのかも知れません。

ユキジ(右)

ユキジ(右)

(常盤貴子)

(C)2009 映画「20世紀少年」製作委員会

 ともあれ、主人公のカンナやユキジ、そのカンナを守るために脱獄したオッチョ(豊川悦司)をはじめ、ケンヂの昔の仲間達は、それぞれに「ともだち」の正体を探ろうとします。

 そうした中、学校で習う「血の大晦日」事件の歪められた事実に憤るカンナは問題児扱いされ、洗脳施設である「ともだちランド」に送り込まれることに。

 ここでは、バーチャル・リアリティで“ケンヂ一派”を撃ち殺すゲームを繰り返しさせられ、その中で有能な人材~ともだちの敵に廻りそうな正義感溢れる人材を見つけると、「ともだちワールド」という場所に移送されるのです。

 徹底した洗脳を行うための「ともだちワールド」は、ほとんど廃人になるまで出所できないという恐ろしい施設。

 そこから、命がけでカンナを救い出したのは、あらかじめ潜入していたケンヂの仲間ヨシツネ(香川照之)でした。

ともだちランド

ともだちランド

(C)2009 映画「20世紀少年」製作委員会

 救い出されたカンナは、この一連の事件に自分の母キリコ(黒木瞳)の存在が深く関わっていることを察知。

 やがて、キリコが「ともだち」に加担して、「よげんの書」の殺人ウイルスを開発したチームの一員であった事実にたどり着きます。

 苦悩するカンナ。

 さらには自分自身の出生の秘密~父親が誰であったのかという事実に近づいて、その苦悩は深まるばかり。

 そんな中で「ともだち」は、少年時代にケンヂの「よげんの書」に対抗して自ら書いた「しん・よげんの書」の「人類・再抹殺計画」のシナリオにしたがって、「救世主を抹殺する」指示を出します。

 折りしも「ともだち」が国民の絶大な賛美を受けて、新宿パレードを挙行。

 時を同じくして、カンナの元に送り込まれる刺客。

 それを阻止しようと駆けつけるオッチョやユキジやヨシツネ達。

 さあ、暗殺の阻止は間に合うのか?

 カンナの運命やいかに?!

20世紀少年

20世紀少年

(C)2009 映画「20世紀少年」製作委員会

 しかし、この物語、そんなに一直線には進みません。

 なにせ、稀代のストーリー・テラーとして定評のある浦沢直樹の原作なのですから。

 この後も「ともだち」の暗殺、そしてその劇的な復活、死んだかに見えたケンヂの意外な姿での登場とめくるめく展開をするのです。

 うむむむむ・・・。

岸波 ケイコ、どうだった今回の第2章は?

うーん、盛り上がりに欠けるわねー。

岸波 第1章の時は、最後の「血の大晦日」があったからね。

ロード・オブ・ザ・リングの第2部とおんなじね。

ストーリーの繋ぎってだけで、ここだけじゃ何も分からないよ。

岸波 たしかになぁ・・。

 第1章では、原作キャラとよく似た俳優陣、テンポよく深まるサスペンスやラストの「血の大晦日」といった大スペクタクル・シーンがあったので、それなりに一本の映画としての起承転結がありました。

←(「ともだち」の正体は謎のままでしたが)

 しかし、原作を知る者なら容易に予測がついたように、この話の中盤には、そもそもそんなスペクタクル・シーンは存在しないのです。

←(第3章には再びスペクタクル・シーンが用意されています)

 したがって、あくまでも「つなぎ」のストーリー。

 そして、当然ですが、「ともだち」の正体も謎のままです。

ヨシツネ(左)

ヨシツネ(左)

(香川照之)

(C)2009 映画「20世紀少年」製作委員会

 このストーリーの最大の謎は、「ともだち」の正体が誰なのかということ。

 ケンヂの同級生の誰かであるということは分かっていますが、それらしい人物は次々と命を落として生きます。

 まあ、実際には、既に発売されている原作コミックの最終巻で明らかにされていますので、周知の事実といっていいでしょう。

(※以下の記事では、ともだちの正体に関する名前の記述を伏字としています。リンク先には書かれていますので、まだ知りたくない方は要注意!)

 ねえアニキ。●●●●君って誰だっけ。

 ああ、「ともだち」の正体の。

 どっかに出てたっけ? あまり記憶にないんだよね。

 ほとんど登場してないよね。

たしか小学校の時に死んだ同級生の名前だったような・・。

ともだちの正体?

ともだちの正体?

(C)2009 映画「20世紀少年」製作委員会

 ・・・そう。

 かなり多くの人が、最終巻「21世紀少年(下)」の謎解きを読んで同じ感想を持ったはず。

 Web版の「日刊サイゾー」では、これを評して次のような記事も。

▼引用開始

多くの読者に支持されている一方で、「たくさんの伏線をはって、一切回収していないという、浦沢作品のお約束のパターン」などという批判の声も多いことをご存じだろうか?

最終回でようやく明かされた黒幕「ともだち」の正体は、1巻の同窓会シーンで名前が出た程度のまったくなじみのない存在だった。

また、「『ともだちは・友力・を使う』とか、どうなったの?」「理科室の第5の人はなんだったの?」「なんでもカンナの超能力で片付けられてしまう」など、細かな矛盾点に対する指摘も多く、伊集院光も自身のラジオ番組で、「収拾つかなくなって、広げた荷物を大八車にぶっこんで夜逃げしたみたいなラストだな! だいたい『MONSTER』もひどかった!!」と、グチをこぼしていたほどだ。』

▲引用終わり

 ~と、こんな感じで一刀両断。

 しかあしっ・・・!

20世紀少年

20世紀少年

(C)2009 映画「20世紀少年」製作委員会

 僕が、原作「20世紀少年」の謎を検証しているうちに見つけた次のサイト「己【おれ】 by 正衛門」の記事「“ともだち”の正体が●●●●君となる7つの理由」では、とても深い考証が。

>> ”ともだち”の正体が●●●●君となる7つの理由

 うーむ、なるほど。

 再度イッキ読みしなければ、到底たどりつけない衝撃の事実です。

 ここを読めば、原作者浦沢直樹が、いかに慎重に伏線を張り巡らせていたのかが一目瞭然。

 三人の「仮面のともだち」がどういう関係にあって、どういう役割を果たしてきたのか、実に深く読み解かれておりました。

 きっと、相当へヴィーなファンであると同時に、優れた読解力を持つ人物なのでしょう。

20世紀少年

20世紀少年

(C)2009 映画「20世紀少年」製作委員会

 なにはともあれ、映画「第3章」まで通して楽しむためには、避けて通れない今回の「第2章」。

 特に、映画で初めてこのストーリーに触れる方は必見です。

 しかも・・・!

 どうやら、映画のラストは原作と異なるアナザー・ストーリーという噂もありますので、今回の第2章で微妙に原作と変えて提示されているディテールを見逃すワケには行きますまい。

 ふふふふふ・・・。

 

/// end of the “cinemaアラカルト85「20世紀少年-第2章-最後の希望」”///

 

(追伸)

岸波

 第1章は、4000万円をかけて製作した「血の大晦日」の巨大ロボットの前で完成披露会見が行われ、世界初となるルーブル美術館のモナリザの前でのワールドプレミア記者会見で度肝を抜きました。

 そして今回の第2章では、8000万円の巨費を投じ、映画の象徴的オブジェ~大阪万博の太陽の塔を模して「ともだち」が作り上げた「ともだちの塔」を再現して、完成披露会見が行われました。

 この対応からしても、映画制作委員会メンバーの並々ならぬ「20世紀少年」への思い入れが感じられます。

 コミック「20世紀少年」は、その唐突なラストシーンに賛否両論の大議論が巻き起こったわけですが、上述「己【おれ】」サイトに集ったファン達の熱心な考証によって、やっと真実の姿が浮かび上がってまいりました。

 この間、原作者の浦沢直樹が賛否両論の評価に対して完全な沈黙を守っていたというあたりが、逆に彼の凄さを窺わせます。

 研究によって初めて作品の真意が読み解かれることは、文学などではよくある話ですが、画像であからさまに表現しなければならないコミック世界では異例のことでしょう。

 やはり、この男、普通の天才ではありません。

 彼も自ら制作に参加している映画・最終章のアナザー・エンディングが、今から楽しみでなりません。

 

 では、また次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

カンナとカンナ

カンナとカンナ

(映画とコミック)

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト86” coming soon!

 

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