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「栄華の墓所」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2006.7.21
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 今年最大の事件が遂に始まる。

 はてさて、噂の「ダ・ヴィンチ・コード」。

 全世界で4000万部が売れているという超ベストセラーなのだそうです。

 この数字が凄いのかどうか分りませんが、手元の資料によりますと、「ドラゴン・ボール」の世界発行部数が1億6千万部、あの有名な「ゴルゴ13」に至っては、国内発行部数だけで1億5千万部とありますので、それらの四分の一程度ということは、“活字系”としては中々の数字なのでしょう。

ダ・ヴィンチ・コード

(C)2006Sony Pictures.

ねぇケイコ。 これって結局、どーゆーストーリーなんだろ?

よくぞ聞いてくれました! ネットでストーリーを見つけたんだけどね・・。

あ、ちょっとマテー! それは言わんでいい。

ふふふ、見たのは最初の数ページだけよ。(何を怯えてるんだか。)

そ、そっかー。(ホッ・・・じゃ言ってみ。)

私が思うに、あの秘密っては“イエスの子孫”のことじゃないかしら?

ええー!!(そんな馬鹿な。) だって、イエスは独身じゃん?

マグダラのマリアがイエスの愛人だってことはユーメイよ。

   多分、その辺をモチーフにしたのじゃないかと・・。(これ私の推理。)

あはははは! そんな単純じゃないんじゃん?(多分だけど・・)

ま、そんな単純じゃない事を期待してるわ。

 ・・・そんな会話がありまして、期待して臨んだワーナー・マイカル福島。

 いかがなりますことやら。

 

 さて、この映画「ダ・ヴィンチ・コード」は、ダン・ブラウンのベストセラー小説を「ビューティフル・マインド」のオスカー監督、ロン・ハワードが映画化したもので、主人公の宗教学教授ラングドンをトム・ハンクスが、もう一人の主人公フランス司法警察の暗号解読官ソフィー・ヌヴーを「アメリ」のオドレイ・トトゥが演じています。

ラングドン教授とソフィー・ヌヴー

ラングドン教授とソフィー・ヌヴー

(トム・ハンクス&オドレイ・トトゥ)

(C)2006Sony Pictures.

 さらに、ラングドンを殺人事件の容疑者として執拗に付け狙う司法警察の警部補ファーシュ役には名優ジャン・レノ、事件の鍵を握る富豪の宗教研究家リー・ティービング役には、「ロード・オブ・ザ・リング」で白の魔道師を演じて大人気を博した演技派イアン・マッケランを配する布陣。

 うむぅ・・・キャストの質は粒揃い、原作も世界的ベストセラーとあっては、失敗しようのない映画ではありませんか。

警部補ファーシュ

警部補ファーシュ

(ジャン・レノ)

(C)2006Sony Pictures.

 ストーリーは、ルーブル美術館で館長のジャック・ソニエールが殺害される事件が発生。

 何とその被害者は、ダ・ヴィンチの描いた「ウィトルウィウス的人体図」を模した形で自ら全裸になって死亡し、発見されるという猟奇的な事件。

 調査を依頼されたハーバード大宗教象徴学教授ラングドンが、行きがかり上、行動を共にすることになった司法警察暗号解読官のソフィーとともに、死体が残したダイイング・メッセージを解読していく中で、キリスト教史上最大の謎に行き当たるという内容・・。

 あらぁ・・・いきなり乱暴な設定ですねぇ。

 映画の中では、ソニエール館長を殺害するカトリック教団オプス・デイの暗殺者、修道僧シラス(ポール・ベタニー)の殺人シーンも描かれますので犯人は明確なのですが、このソニエール館長は、暗殺者シラスの致命的な銃弾を受けた後に、わざわざ現場を移動し、自ら裸になって「人体図」の形になってから死亡するのです。

 なんだかなぁ・・。

 結局は、自分の娘(!)である暗号解読官のソフィーと友人のラングドンに“キリスト教最大の謎”を解いてもらうためにそうした~ということになっていますが、やっぱり、なんだかなぁ・・・。

ウィトルウィウス的人体図

ウィトルウィウス的人体図

(ダ・ヴィンチ)

 ま、この映画、強引な設定に目をつぶれば、それなりにテンポのいい演出と暗号解読のサスペンスで飽きさせないのですが、何か一つ“ひっかかり”を感じてしまうと、もうイケマセン。

 ということで、まめしば嬢と語らった後日談・・・。

なあ、まめしば。「ダヴィンチ・コード」どうだった?

面白かったわぁ、特にあの不気味な暗殺者の男の子がよかったわ。

なぬ?あのマゾヒストの白い男? ・・・確かに怪演だとは言えるが。

オキシはだめだったの?

何か、暗号解読させるために無理やりストーリーを作ったみたいでさ。

まあ、それはそうかも。

それに途中で絶対許せないトコがあって、そっからは笑って観てたよ。

許せないコトって、なに?

白の魔道師のオッサンがいるじゃない?

ああ、ロード・オブ・ザ・リングのね。

何であのオッサンが黒幕なんだよ。どー観たって善人じゃん?

人が良さそうだものね。

白の魔道師に悪役をやらせるなんて、とんでもないキャスティングだよ!

  あの人は、絶対に悪事を働けない顔なんだよ。

きゃはははは!

(※この後には、大きなネタバレがありますのでお気をつけ下さいませ。)

M:I:Ⅲ

リー・ティービング

(イアン・マッケラン)
←白魔道師ですね!

(C)2006Sony Pictures.

 ・・・ということで、配役に意義ありの僕でしたが、中盤からのストーリーはハチャメチャな展開に。

 カトリックが守ろうとしていた“キリスト教最大の秘密”とは、何とケイコが予言したように、イエスとマグダラのマリアの間に子供がいて、その子孫の系譜が現代に続いているということ。(あら!)

 神の子イエスに子供がいては、キリストの神性に傷か付くということで、子孫の抹殺を図ろうとするオプス・デイ教団と子孫を守ろうとするシオン修道会の丁々発止というのが事件の真相なのです。

 うむぅ・・・これって、ノンフィクション「レンヌ=ル=シャトーの謎」で提起された有名なプロットで、近年大ヒットしたミュージカル「ジーザス・クライスト・スーパースター」の設定そのままではありませんか。

 あらためてダン・ブラウンが何者かと思って調べてみますと、実はギターの弾き語りをするミュージシャンでした。

 そっかー、「この小説における芸術作品、建築物、文書、秘密儀式に関する記述は、すべて事実に基づいている。」などと思わせぶりに解説してあったのは、要するにシャレなんだな。

 そうと割り切れば、これはこれでよくできたエンターテインメントになっているのではないでしょうか。

 (白の魔道師の役柄だけは許せませんが。)

暗殺者の修道僧シラス

暗殺者の修道僧シラス

(ポール・ベタニー)

(C)2006Sony Pictures.

 そんな風に感じたのは自分だけなのかと不安になり、後日、ネットのレヴューなどを眺めてみますと、そもそも試写会の段階で、プロの評論家たちから失笑を浴びていたとのこと。

 (うーん、わざわざ素っ裸になって死ぬって、命を賭けた暗号マニアだものなぁ・・)

 しかも、何世紀にもわたってシオン修道会が守ってきたイエスの血筋の末裔とは、ストーリー中、何度も死に掛けた館長の娘(実は養女)の暗号解読官ソフィーその人だったというオチ。

 (そんなことで、どうして何世紀も生き延びられたのか・・?)

 もっとも笑えたのは、映画のラスト・シーンに明らかになる「マグダラのマリア」の聖櫃の隠し場所。

 (さすがにこの謎くらいは伏せておきます。)

 ともかくも、相当無理をして辻褄合わせをしているので、本格サスペンスを期待するのでなく、マゾヒスティックなオプス・デイ教団の修道僧役のおどろおどろしい怪演や随所に散りばめられた暗号の解読を楽しむ気持ちで観るのがいいようです。

ダ・ヴィンチ・コード

ダ・ヴィンチ・コード

(C)2006Sony Pictures.

 この映画(あるいは原作)が人気を博したのは、モチーフになったダ・ヴィンチその人の魅力が大きいように感じます。

 そして、営業戦略かもしれませんが、内容があたかも実話のごとくに宣伝したのはいかがなものか?

 これに本気で怒った米国カトリック司教会議(USCCB)がホームページで反論し、そのことが話題づくりになって、かえって本が売れたという皮肉な結果になっています。

 別にキリストに子供がいようがいまいが、彼が説いた理念や人道の精神それ自体は、人類が誇るべき大きな遺産であることに変わりは無いと思うのですが、敬虔な宗教家にとっては座視できないことなのでしょう。

 ともあれ、様々な話題を振りまいた「ダ・ヴィンチ・コード」・・・

 さて、貴方の感想はいかがだったでしょう?

 

/// end of the “cinemaアラカルト29「ダ・ヴィンチ・コード」” ///

 

(追伸)

ねえ、まめ。 もしかしたらキミ、映画通なんじゃないの?

実はさー、大好きなのよね。

じゃあさ、僕から提案!

何よ?

今度からcinemaアラカルトの共同執筆者になりなよ。

ええー!!

 ・・・ということで、無理やり言ってみた緊急提案。

 何せワタクシ、最近はラーメンやら宇宙やら天衣夢縫やら葉羽詩集やら編集やら仕事で忙しいじゃないですか。

←(「仕事」は最後かよっ!)daddy

 はてさて、まめしば嬢はいかが応えてくれるやら?

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

ルーブル美術館

ルーブル美術館

←はい、ここが映画のラストシーン!

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト30” coming soon!

 

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