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「Glidin'」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2005.7.7
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 460年の時を越え、
 西暦1549年の戦国時代に、自衛隊がタイムスリップした。

 敵は、織田信長!
 消滅するのは歴史か、俺たちか。

 観てまいりました・・・角川映画「戦国自衛隊1549」!

「戦国自衛隊1549」

 とはいえ、今回も「何を観るか」でかなり悩んだのでございます。

 というのも・・・

 

 僕たちがワーナーマイカルシネマズ福島に入ると、ちょうど二つの映画が同じくらいの時刻から上映予定だったのです(笑)

 一つが「バットマン・ビギンズ」、そしてもう一つがこの「戦国自衛隊1549」。

 「バットマン・ビギンズ」は、これまでのスタッフとキャストを総入れ替えして、“人間ドラマ”を前面に押し立てたとのこと。

 しかし・・・

 はっきり言って、僕はこれまで、アメリカン・コミックが映画化された作品を見て「よかった」と思ったことが一度もないのです。

 その理由は、ストーリーが浅すぎるということ。(異論もあるでしょうが・・。)

 その辺の詳しいコメントは、また別の機会に譲りますが、とにかく、毎回、映画の宣伝惹句に裏切られ続けているからです。

「戦国自衛隊1549」

「戦国自衛隊1549」

 一方の「戦国自衛隊」・・・。

 今から四半世紀以上も前の1979年、角川映画の忘れられない名作として記憶にとどまっています。

 まだ学生の頃、夢中になった半村良の原作。

 そして、その原作のスケールを遥かに越えるダイナミックなスクリーンから受けた感動。

 千葉真一の熱演も心に残っているし、自衛隊と武田騎馬隊の壮絶な闘いというテーマでありながら、BGMとしてちりばめられたニューミュージックの意外性に驚きました。

 “果たして25年の時を経て、戦国自衛隊がどのように進化したのか・・・”ということで、結局こちらを見ることにしました。

織田信長

織田信長

(in「戦国自衛隊1549」)

 さて、今回の「1549」ですが、正編「戦国自衛隊」の直接の続編ではなく、その設定だけをモチーフした新しい作品になっていました。

 自衛隊の磁場発生装置を使った秘密実験中の事故で、的場隊長の率いる部隊が煙のように消え失せてしまい、彼らは装備ごと戦国時代にタイムスリップしたらしいということが判明します。

 その後、日本の至るところに時空が混乱した「ホール」が現れて、不気味に拡大を続けるという事件が相次ぐのです。

 どうやら、ホールが拡大している理由というのは、自衛隊が過去の歴史に干渉してしまったためで、このままでは現在の世界が消滅してしまうかも知れない・・・。

 ということで、自衛隊に「ロメオ隊」という部隊が組織され、改良された磁場発生装置(人工タイムスリップ装置)を用いて、戦国時代まで的場隊を救出に向かうというストーリーです。

 今回の「1549」の製作には本物の自衛隊も全面協力したということで、実際の平成自衛隊の装備が用いられて戦闘シーンの迫力は満点です。

濃姫

(in「戦国自衛隊1549」)

 ロメオ隊が戦国時代に到着すると、突然、彼らを襲って来る織田軍団・・・しかも織田軍は、何と戦闘ヘリまで使ってくる!

 ほーら、意外な展開にドキドキするでしょう?

 この時代で織田軍と称しているのは、どうやら彼らが救出しようとしている当の的場隊であることが判明します。

 いったい、的場隊はどうしてそのようなことをやっているのか?

 果たして救出ミッションは成功するのか。

 そして、現代世界は救われるのか?

 “消滅するのは歴史か、俺たちか・・・”

 ・・・ということで、サスペンスも盛りだくさんです。

正編「戦国自衛隊」

正編「戦国自衛隊」

(1979年作品)

 でも、ストーリーの随所にタイムスリップの辻褄合わせをしようとするところがあって、ちょっと説明的過ぎる感じがしました。

 例えば「歴史は自らほころびを修復しようとしているんだ!」なんてセリフを言いますが、それってかなり無理があるのではないでしょうか。

 戦国時代に平成自衛隊の装備を大勢の人が目にしたり、それらの装備の残骸を残したりしてしまったら、その後の戦闘の歴史は決定的に変わってしまうはずですよね?

 「戦国自衛隊」にとどまらず、このパラドックス問題が「タイムスリップもの」の最大の難問で、大抵のSF作品では、「パラレルワールドで理論的な解決を図っています。

 ・・・と言うか、今のところそれしか説明手段が無いのですね。

※パラレルワールド理論・・・この宇宙には、あらゆる可能性によって無限に枝分かれする歴史の数だけ並行世界が多元的に存在するとする理論。タイムスリップで行った先は自分たちの歴史の直接の過去ではなく、別の次元の過去に横滑りしたことになる。

 ところが「1549」では、この解決方法を取らなかったものですから、どうしても無理な説明をしなくてはならないのです。

 半村良は、もともと妖怪あり、悪霊あり、何でもありという伝奇小説の流れをくむ作家ですから、あまり科学的な説明にこだわらなくてもよかったのではないかと思います。

 その点、正編の「戦国自衛隊」では、タイムスリップを起こさせたのは“解明できない超自然的な力”というだけにしてありますし、自衛隊は帰還できないまま全滅してしまうし、そこでの“滅びの美学”に焦点を当てて描いているので、あまり理屈を考える必要がありませんでした。

コミック版「続・戦国自衛隊」

←こちらは別の作家がコミック化したもう一つの「戦国自衛隊」。
敵は何と、同時にタイムスリップしてきた米軍空母!

戦国自衛隊に感動した世代が半村良亡き後、次々と独自の作品を描いています。
影響の大きさがわかりますね。(書き下ろしで継続中。写真は第6巻。)

 ともあれ、その奇想天外なストーリー展開と戦闘のど迫力シーンでぐいぐい引き込まれてしまうこの「1549」、海外からも熱いオファーのラブコールが送られていて、米・英・独・露・ウクライナ・韓国・台湾・香港をはじめ世界40カ国以上での上映が決定しています。

 これまでの邦画で、海外上映国が最も多かったのが「リング」の30カ国ですから、まさに快挙と言えるでしょう。

 しかも・・・!

 「1549」の撮影済みフィルムをハリウッドがオリジナル編集して、「SAMURAI COMMANDO MISSION 1549」というタイトルで、リ・プロダクト上映されることも決定したそうです。

 世界中に日本映画の新たなセンセーションを巻き起こすことになりそうですね!

 ま、「正編」を知っている僕としては、多少不満がないわけでもない「1549」でしたが、初見の人ならば、そんな邪念に捉われずに十分に楽しめる映画でしょう。

 半村良の残してくれた名作ストーリー、それを継承しつつも越えてやろうとする幾多の若い作家たち・・・そんな想いが伝わって来て、とてもうれしい映画でした。

 

/// end of the “cinemaアラカルト16「戦国自衛隊1549」” ///

 

(追伸)2018.2.26

岸波

 最初は小説だったかコミックだったか・・・いや、やはり映画だった(笑)と思いますが、その設定には大興奮した記憶があります。

 今となっては、たくさん作られ過ぎている感じがあるタイムスリップもの・・・(それこそ恋愛ドラマまで!)ですが、当時は新鮮な驚きがあったものです。

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

ハリウッド版映画ポスター

(←こちらも迫力ありそう!)

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト17” coming soon!

 

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