<Back | Next>
「Blue Island」(TAM Music Factory)

by 岸波(葉羽)【配信2015.2.21

 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 ジョーカーを見抜け。すべてを欺き、生き残れ。

 KAT-TUNの亀梨和也君と深キョンが主演する『ジョーカー・ゲーム』をケイコと観てまいりました。

 原作小説は読んでいなかったものの、新聞の広告欄などで時々見かけていた売れ筋作品なので気になっておりました。

 実写映画が来るというので「それなら映画で観に行こう」と決めていたのですが、ある日コンビニに行きますと・・・

ジョーカー・ゲーム

(C)2015「ジョーカー・ゲーム」製作委員会

 映画『ジョーカー・ゲーム』のコミカライズ版というのが出ておりまして、思わず購入してしまいました。おーまいがっ!!

 読んでみると、これが面白くてどうにも止まらない。気が付けば一気読み。再び、まいがっ!!

 結局、ストーリーは事前にわかってしまったのですけれど、何はともあれ映画館へ足を運んだ次第。さて、どのような映画であったのか?

 

 『ジョーカーゲーム』の原作は、柳広司が書いた同名の短編連作スパイ・ミステリシリーズ。

 2009年に刊行され、第30回吉川英治文学新人賞や第62回日本推理作家協会賞を受賞、「本屋大賞」や「このミステリーがすごい!」などでも上位にランクインした人気作品。続編として「ダブル・ジョーカー」、「パラダイス・ロスト」が刊行されています。

 原作が短編連作のため、映画化に当たってはこれらのエピソードを繋げ合わせたオリジナル・ストーリーが組み立てられました。

ジョーカー・ゲーム

(C)2015「ジョーカー・ゲーム」製作委員会

 さて、そのストーリーですが、時は第二次世界大戦前夜の日本。主人公の亀梨君は帝国陸軍の士官候補生。ただし、パラレル・ワールド設定なので、国際関係も実際とは微妙に異なっています。

 士官学校で匍匐前進の訓練中、亀梨君は、身体の不調で思うに動けない同僚が上官から厳しい叱責を受けたのをかばったはずみで上官を撲打。その規律違反を問われて銃殺刑を宣告されます。(え、これだけで死刑かよ!?)

 刑場で執行官から銃口を向けられたその時、謎の将校が登場。彼は陸軍内の諜報機関である「D機関」の総帥、結城(伊勢谷友介)という人物。「命を救う代わりに自分の下で働け」という流れ。

 その後、D機関のスパイ養成施設で同僚たちと共に様々な訓練を受ける亀梨君ですが、このあたり(いきなり頭角を表わす)コミックとは違って、一人だけ浮いている感じ。(イジラレ・キャラの設定?)

 しかも同僚たちは、グルになって彼をハメようとさえするのです。どうやら民間出身者の同僚たちにとって「陸軍」というのは権力の権化、目の敵だったようで。

目隠しで銃を組み立てる訓練

(C)2015「ジョーカー・ゲーム」製作委員会

 そんな中で、亀梨君と同僚たちの諍いが発生。逆切れした同僚の一人が銃を持ち出して発砲する騒ぎとなります。あらららら・・。

 (ん、待てよ。この「同僚」役って、どっかで見たような・・?)

 駆けつけた結城が諍いを静止。しかし、発砲た「同僚」は組織からの追放を言い渡されてしまいます。

 (この「同僚」・・もしかすると小出恵介クン!?)

 多少“太目”になっていたので「アレ?」と思ったのですが、これは紛れもなく小出恵介君。

 でも、僕のお気に入り俳優の一人である小出恵介がこんなチョイ役でリタイアなの? (~とも思いましたが、後から重要な役で復活します。)

D機関のスパイ候補生 三好(小出恵介)

(C)2015「ジョーカー・ゲーム」製作委員会

 ともあれ、養成機関での過酷な訓練に耐えた亀梨君に最初のミッションが下されます。そのミッションとは、新型爆弾(原爆?)の製法を記したマル秘の「ブラックノート」をアメリカ大使グラハムの元から奪取するというもの。

 「嘉藤次郎」という名前を与えられた亀梨君は仲間二人と共にグラハムがいる「魔の都」に潜入。“チェス好きの写真館店主”としてグラハムに接近し、館の構造を頭に入れてから改めて夜半に忍び込みます。

 そして見事「ブラックノート」を見つけ出し、カメラで一ページずつ写し撮る。あまりに安直なミッション・・・と思いきや、そうは問屋が卸さない。

 先のページの方には何やら女性のようなイラストが描かれている。何これ、マル秘のエロ・ノート!? ・・・潜入は失敗しあえなく退散。

 アオリには“異能の天才たちが繰り広げる、生と死が紙一重で隣り合う究極の頭脳ゲーム”とか書いてあるのですが、それにしては安易な仕掛けというか、無駄なエピソードも多いような気がします。

ジョーカー・ゲーム

(C)2015「ジョーカー・ゲーム」製作委員会

 グラハムの館にいるドジな新人メイドのリン(深キョン)。食器を落としてグラハムに叱られたり、叱られついでにセクハラされたり、亀梨君に見初められたり(笑)

←(映画公式サイトには「グラハムの愛人」と書かれていましたが、そんな風には見えません。セクハラに必死で抵抗していたし。もしかして途中で設定変更?)

 で、このメイド、ただのチョイ役のはずがありませんね。美しすぎるし、雇われるタイミングが絶妙だし、深キョンだし(笑)

 実はこのリン、フリーのスパイというか女盗賊というか・・・「ルパン」の峰不二子、「スプリガン」の染井芳乃の役回り。

 二度目の侵入で「ブラックノート」をゲットした亀梨君ですが、リン(深キョン)にアッサリと横取りされてしまいます。

 その後、同じくノートを狙う英国諜報部のメンバーに亀梨君とリンが拷問されたり、D機関に任務を失敗させて解散させようとする陸軍幹部の陰謀が明らかになったり、いろいろな勢力が入り乱れてクライマックスへ向かいます。

 果たして亀梨君は、初ミッションを成功させることができるのか? そして、亀梨&リンの運命や如何に?

ジョーカー・ゲーム

(C)2015「ジョーカー・ゲーム」製作委員会

 どうして日本には「007シリーズ」や「ミッション・インポッシブル」のようなスパイ映画がないのだろうと、かねがね不満に思っていました。(魅力的なジャンルであると思うのですが。)

  その一つには、日本政府には情報機関が存在しないので、リアリティが無いということがあるかと思います。(警察内部の秘密組織をテーマにした小説は数多くありますが。)

 スパイ物ではありませんが、かつて、あの『ゴルゴ13』が二度にわたって映画化されたことがありました。そこでデューク東郷を演じたのは、高倉健と千葉真一の大御所二人。しかし・・・原作を知る者にとっては、明らかなミス・キャスティング。

 お二人には失礼ですが、ゴルゴの冷徹さや迫力を演じることは出来ても、コンピューターのように精緻な理論、言語・医学などあらゆる知識に精通したクレバーさを感じることは出来ませんでした。結果、映画は惨敗。

 そうしてみると、日本では、「国際スパイ」を演じられる俳優を探すのが難しいということかも知れません。

 ならば、亀梨君はどうであったか?

ジョーカー・ゲーム

(C)2015「ジョーカー・ゲーム」製作委員会

 “駆け出しのスパイ”という設定に救われて、ぎりぎり合格点という感じですが、このままでは“魅力的なスパイ”とは言い難いのが本音。

 若すぎるということもあって、アクションはそこそこ演じられるのですが、権謀術数渦巻く世界のスパイ世界の中で独り立ちしていけるタイプではありません。

 また、ブラックノートをせっかく入手しながら、リンが英国諜報部に拉致されるのを目にして任務を放り出して救出に向かうというシナリオもどうなんだろう?

 これがルパン三世のキャラならあっていい進行ですが、いかんせん亀梨君は普通のマジメ人間キャラ。必然性が無いし、似合わないのです。

 また、亀梨君とリンを捉えた英国諜報機関が「お前たちの暗号は解読している」と言いながら、亀梨君自身にニセ情報を打電させ、結果としてその電文に潜ませた“符丁”でニセがばれるという進行にも唖然。

 解読しているなら、どうして自分たちで電文を打たないのか。一国のスパイとしてあり得ない大チョンボでしょう。

 そんなユルユルの進行の中にあって、全体をピシッと締めているのがD機関の司令塔結城を演じる伊勢谷友介さんの存在。

 演技力も抜群なら存在感も抜群。スパイとはかくあるべしという見事なお手本を見せてくれました。

 小説「ジョーカー・ゲーム」には、若き日の結城が第一線のスパイとして活躍するエピソードもあるので、伊勢谷友介主演のスピンアウト『ジョーカーゲーム』という手もあるかも。(“スピンアウト”というより“本線に戻る”でしょうか。)

ジョーカー・ゲーム(原作小説)

作:柳 広司

 どうもスパイ映画としては安易なシナリオ、亀梨君のキャラに合わせたのではないかと思われる設定の改変が目につくと思っていましたら、あるブロガーが厳しい指摘を。

 映画のエンドロールに、製作スタッフの一員として「藤島ジュリーK.」のクレジットがあったと言うのです。(気づきませんでした…)

 この人物は、ジャニーズ事務所の喜多川社長の姪、ジュリー景子さんで、将来の事務所社長と目される人物。

 そういう事ならば、この『ジョーカー・ゲーム』がジャニーズ映画になってしまった事に合点がいきます。

 映画全体としてはテンポもよく、切れのいいアクション、様々なサプライズで一気に見せてしまうエンターテインメントに仕上がっていますので、多少、つじつまの甘い部分は眼をつぶってもいいかもしれません。

 まあ・・・深キョンのお色気シーンというかサービス・ショットもありますので、ここは大きな気持ちで(笑)

ジョーカー・ゲーム

(C)2015「ジョーカー・ゲーム」製作委員会

 映画の終盤、ブラックノートを奪還した亀梨君&リンは、英国諜報部によって塔の最上階に追い詰められます。

 ここに来るまで、起死回生の反撃手段として武器庫から導火線状に撒いてきた火薬に点火するものの、途中で火が消えてしまいそうに。

 その時っ!!!

 うん、ここが一番のサプライズだったかな。
(会場から「ありえねー」の悲鳴が)

 日本に(多分)初めて登場した本格スパイ映画『ジョーカー・ゲーム』。さて、貴方の評価は?

 

/// end of the “cinemaアラカルト163 「ジョーカー・ゲーム」”///

 

(追伸)

岸波

 亀梨君は、今回のミッションに当たって「嘉藤」という偽名が与えられるのですが、(もしパート2が制作されるとしても)次のミッションでまた別の名前に変るので、あまり思い入れがありません。ということで「亀梨君」で通しました。

 何せ、ジャニーズのメンバーの名前やグループの区別がつかない僕にとって、初めて「亀梨君」が誰であったか分かったので(笑)

 あ、そうそう・・序盤早々に姿を消した小出恵介クンのことに触れるのを忘れていました。

 彼は、最後の最後に亀梨君&リンを助けに来るのです。結果的に一番カッコいい役かも。(チョイ役としては)

 そして、拷問仲間とかで仲の深まった(笑)亀梨君とリンは、もしかして「007エンディング(愛し合う)」か、と思いきや、まさかの「ルパン三世エンディング」に。

 『そ~れはないぜフージコちゃ~ん!!』

 ~とでも言えばキマルのですが、それができない亀梨キャラ。生真面目過ぎるんですよね。うん、やっぱり「ジャニーズ映画」だわ(笑)

 でも、亀梨ファンにはきっとたまらない映画でしょう♪

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

「ジョーカー・ゲーム」公式サイトより

eメールはこちらへ   または habane8@ybb.ne.jp まで!
Give the author your feedback, your comments + thoughts are always greatly appreciated.

 

To be continued⇒  “cinemaアラカルト164” coming soon!

 

<Back | Next>

 

PAGE TOP


bannerCopyright(C) Habane. All Rights Reserved.