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「行楽日和」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2012.5.1】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 時空を超えた入浴スペクタクル

 超話題の「テルマエ・ロマエ」をケイコと親父と三人で見てまいりました。

 そう・・・大震災以来、寝たきりの状態だった親父が回復し、出歩けるまでになったのです。

 昨日4月30日には、福島市飯坂温泉にある桃園の花見に連れ出し、その後、温泉施設「かっぱ天国」での入浴。

 ああ、いいお湯だ(ちょっと熱いけど)・・・ ん?お風呂っ!

テルマエ・ロマエ

(C)2012「テルマエ・ロマエ」製作委員会

 ~ということで、そのまま駅前のワーナー・マイカル・シネマズ福島へと足を運んだのでございます。

ケイコ ねえ、お父さん、映画なんて久しぶりなんじゃない?

親父 そうだなぁ、かれこれ・・・50年ぶりくらいかな。

ええー!!(半世紀じゃん)

 またまた親父の「久しぶり攻撃」(※以前のは天衣夢縫を参照)にびっくりしましたが、映画館の混雑にも驚きです。

 「テルマエ・ロマエ」を観るべくお客さんが長蛇の列。最近にない超満員状態であります。

 もっとも、一番驚いていたのは当の親父自身でありまして、彼の『失われた50年』の間に、とっくに映画は衰退したものと思っていたらしく。

 さて、映画版「テルマエ・ロマエ」の内容やいかに。

 

 原作は、「コミックビーム」に連載されているヤマザキマリのコミック。「テルマエ」とは、ローマ時代のお風呂のことで、「ロマエ」は“ローマの”。

 つまり、「ローマのお風呂」というタイトルなのでございます。

 当初、不定期連載から始まったこの作品、スタート以来の反響はなはだしく、2010年4月からは定期連載に移行。

 2010年の第14回手塚治虫文化賞短編賞と、書店員が選ぶ「マンガ大賞2010」をダブル受賞し、2011年には「このマンガがすごい!」2011年版オトコ編の第二位、全国書店員が選んだおすすめコミック2011で三位入選という快進撃でございます。

 僕も常々、「このマンガがすごい!」のラインナップは購入の参考にさせてもらっていますので、当然、単行本の第一巻から購入しています。

テルマエ・ロマエ Ⅰ

テルマエ・ロマエ

by ヤマザキマリ

 本の帯には『古代ローマの男、現代日本の風呂へタイムスリップ!!』とあります。(ふむふむ)

 主人公のルシウス・モデストゥスは古代ローマ帝国で浴場の設計をなりわいとする建築技師。最近はアイディアが枯渇し、ライバルに差をつけられています。

 その彼が、何故か現代日本の“お風呂”にタイムスリップするという特異体質になる。

 そう・・科学的な説明は一切ありません。『特異体質』・・・あはははは!

 タイムスリップ先で見聞した「平たい顔の民族」(実は現代日本人)のオリジナリティ溢れるお風呂文化に驚嘆し、古代ローマにその技術を再現して、ローマ皇帝ハドアヌスの寵児となるのです。

 この大人気コミックを、「のだめ」シリーズの武内英樹監督が実写映画化したのが本作でございます。

 なにせ古代ローマが舞台と言うとこで、主人公ルシウスを演じる阿部寛ほか“濃い顔”の俳優がズラリ勢ぞろい。

 エキストラの外人さんたちに混じっても全く違和感ありません。(うん、多分)

テルマエ・ロマエ

(C)2012「テルマエ・ロマエ」製作委員会

 さて映画のストーリーは、原作どおりのエピソードをなぞって進行します。(笑いどころも一緒)

 ただ一つの例外は、ルシウスがタイム・スリップするたび、何故かそこに居合わせる漫画家志望のOL真実(上戸彩)がヒロイン役で絡むこと。

 ルシウスの時代のローマの公衆浴場は、やたらケバケバしく、格闘技の会場にもなっているという喧騒の世界。

 “お風呂は癒しだ”と生真面目に考えるルシウスは、時代の変化について行けず職を失うハメに。

 失意のルシウスは、喧騒の公衆浴場内で静穏を求めるため、頭までザブンと浴槽に沈みます。

 と、そこで・・・何やら底の方に穴が開いている。いったいこれは・・と近寄ると、“お約束”の引き込まれでございます。

 なぜか大音響で歌うオペラをBGMに、果てしない渦の底に超特急。

 出たところは・・・見たこともない“平たい顔”の民族がくつろぐ現代日本の銭湯でございました。(あらららら)

テルマエ・ロマエ

(C)2012「テルマエ・ロマエ」製作委員会

 我が身に何が起こったのか定かではありませんが、おそらくこれは穴で繋がった“奴隷”たちの浴場であろうと納得し、改めて周りを見廻すルシウス。

 「ケロリン」と書いてある軽量で使いやすい洗い桶に感動。

 浴場の壁に描かれた富士山の絵にまたまた感動。

 あ~癒される!

 で、洗い場からロッカールームに移動すると、何故かそこには見たこともないガラスの器に入った色付きの牛の乳が。

「なんだ、アンタも飲みたいのかい?」

 どうやって明けたらいいのか分からないフルーツ牛乳の蓋を、備え付けの『キャップ外し器』でシュポンと抜いて、ルシウスに差し出すおじさん。

 受け取ったルシウスが一気飲みすると・・・

テルマエ・ロマエ

テルマエ・ロマエ

by ヤマザキマリ

 まあ、こんな驚きの連続。

 確かに古代ローマ人が近・現代日本の文化やテクノロジーを目の当たりにすれば、さもあらん。

 むしろ、我々が日頃『当たり前』と感じているものが、いかに偉大な文明であるか、ルシウスを通して再発見されるのであります。

 ローマに引き戻されたルシウスは公衆浴場の中でノビている。

「ああよかった、目が覚めたかルシウス!」

 友の呼ぶ声に、夢でも見ていたのかと起き上がるルシウス。そして数ヵ月後・・・ルシウスは、“夢”で見た記憶をローマの浴場に再現して大ブレイク。

 こんなタイム・スリップを幾度か繰り返し、その都度、ウォシュレットや温泉卵やシャンプーハットなどをローマ時代にアレンジし、ルシウスは一躍、時代の寵児となるのでありました。

テルマエ・ロマエ

(C)2012「テルマエ・ロマエ」製作委員会

 ルシウスを演じた阿部寛、かなりのハマリ役です。とにかく原作に似ている。(他のキャストも)

 原作の雰囲気を壊さないので、これならマンガのファンも安心して楽しめるでしょう。

 それにしても阿部寛は、筋肉質のいい身体をしています。全裸の後姿など、そのままローマ彫刻のよう。

 ルシウスは自分の作り出したものがオリジナルでなく、“平たい顔の民族”のモノマネに過ぎないことに葛藤を持っています。正直なのです。

 なので、ハドリアヌス帝に賞賛されても心の底から喜ぶことができず、真実を告白したいと考えています。(いつもタイミングが悪くて果たせませんが)

 また、仕事一途が過ぎて、奥さんに浮気をされて逃げられてしまいます。

 性格的に、女性を平気でたらしこむ次期皇帝候補のケイオニウス(北村一輝)などは、どうしても好きになれません。

 結構、複雑な内面を抱えた難しい役どころなのですが、そこも含めて阿部寛が見事に演じています。

 彼にとって“気弱な男”を演じるのは初めての経験ではないでしょうか。

ルシウス(阿部 寛)

(C)2012「テルマエ・ロマエ」製作委員会

 そして、上戸綾。

 原作には登場しない映画オリジナルのヒロイン「真美」役ですが、この役、驚き・嬉しさ・楽しさ・悲しみ・怒り・慈しみと人間のあらゆる感情を演じられるオイシイ役どころで、実にのびのびと演技しています。

 シチュエーションは特殊ですけれど、人物自体は“等身大”で演じられる役。

 きっと撮影現場は楽しかったに違いありません。

 原作を忠実に再現しているストーリーの中で、この真美の存在が“ラブ・ストーリー”という、複線のプロットを加えるのに成功しています。

 原作には書かれていない二人の恋の行方、ファンとしては興味津々となるのであります。

 綾ちゃんと一緒に、古代ローマにタイム・スリップしてしまう“平たい顔の人々”もいい味出してますよー!(実は重要な役どころだし)

平たい顔の人々

(C)2012「テルマエ・ロマエ」製作委員会

 それにしても原作者のヤマザキマリさん、どうしてこんな奇妙奇天烈なストーリーを考えたのか。

 気になって調べて見ますと、まず驚いたのが、マリさんの素顔。

「ええー!かわいい!」

 映画を観に行った人なら、実は誰でも、彼女の“素顔の写真”を見るチャンスがあるのです。

 その素顔・・・人気爆発中の小悪魔女優、吉高由里子ちゃんにそっくりなのであります。(萌え~)

 でもヤマザキマリさんは、れっきとした人妻。その旦那様はイタリア人!

 この旦那様、古代ローマの皇帝の名前を全部言えるというほどの古代ローマおたくなのです。

 マリさんいわく・・・

「ヨーロッパにはお風呂も銭湯もないから、お湯につかりたくてもつかれない。でも、そこら中に古代ローマ時代の浴場の遺跡がある。昔はあったのになぜ今ないのか、それがもどかしくて。」

「イタリア人の夫が日本の家風呂を見て笑うんです。古代ローマ人なら日本の風呂の良さをわかってくれるぞと。」

 なるほど・・・意外なところに創作の契機があったのですね。

真美(上戸 綾)

(C)2012「テルマエ・ロマエ」製作委員会

 ハドリアヌス帝は、アレキサンドリア遠征で愛人のアンティノーが溺死する事件の後、いっきに気力を失って病気がちに。・・・気を揉むルシウス。

 しかしルシウスは、好色家のケイオニウスのことが好きになれず、「ケイオニウスの専用浴場を造れ」というハドリアヌス帝の命を断り追放の身に。

 一方、ローマ帝国北辺のドナウ川を超えて攻め込んできた反乱軍は勢いを増し、前線は総崩れの危機となります。

 ここを破られれば、帝国の威信は地に落ち、容態の優れないハドリアヌス帝の心労も増し、彼の命は風前の灯となるでしょう。

 うむむむむ・・・。

 追放の身となったルシウスは、彼を慕う真美らの助けも借りて一計を案じます。

 そして、自らの命を賭して、ハドリアヌス帝のために立ち上がることを決心するのです。

 帝国とアドリアヌス帝の運命は? そして、ルシウスと真美の運命やいかに?

ハドリアヌス帝(市村正親)

(C)2012「テルマエ・ロマエ」製作委員会

 映画の撮影は、全国各地の銭湯や温泉でのロケに加え、イタリアのチネチッタに造られた広大な古代ローマのオープンセットで1000人のエキストラを動員して行われました。

 ということで、日本での公開に先立ち、4月21日にイタリアの映画祭でワールド・プレミア上映され、大好評を博したということです。

 また、映画館に足を運んだ皆さんには、大変うれしいプレゼントが用意されています。

 それは、先着100万名限定(←ええー!)で、ヤマザキマリ描き下ろしの「テルマエ・ロマエ」特別編がもらえるのです。(僕ももらった♪)

 実は、作者ヤマザキマリさんの美しい素顔の写真は、この『特別編』に掲載されているのです。(美女ですよ~)

 どうです、欲しくなったでしょう。あはははは!

 

/// end of the “cinemaアラカルト137 「テルマエ・ロマエ」”///

 

(追伸)

岸波

 で、“50年ぶりに映画を観た”うちの親父でありますが、「古代ローマ」とか「タイム・スリップ」とかについて行けなかったようであります。 (残念!)

 しかし、映画館に大勢の客がいたこと・・・

 一つのシネマ・コンプレックスの中にたくさんの上映館が入っていたこと・・・

 映画館の中でビールなど飲み食いができること・・・

 映画館スペースの横に猫の預かり所があったこと・・・に一々びっくりしておりました。(さもあらん)

 考えてみれば、50年ぶりに映画館に行ったうちの親父と古代ローマから日本にタイム・スリップしたルシウスは同じような境遇だったのかと。

 あはははは!

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again ! 

テルマエ・ロマエ

(C)2012「テルマエ・ロマエ」製作委員会

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト138” coming soon!

 

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