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 その18 パパ残業、ママ夜勤。 

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“Walking Man” by Music of my Mind

鞍馬「パパ残業、ママ夜勤。なくそう残業・夜勤」というポスターがあります。

 教育関係のお客さんの、職場の壁にところどころ張ってあるのですが、さびしそうな男の子の顔がこの言葉の横に大写しになっている印象的なポスターです。

 時の厚生労働大臣が残業をなくせば子どもが増えるとかのたまってから久しいですが、このポスターの方がよっぽど本質を捉えているなと思います。

パパ残業、ママ夜勤。

パパ残業、ママ夜勤。

 このポスターは国で作ったものではないのですが、こういうのを国がやると、公務員とか一部の大企業とかが賛同して、少しの間残業を無くそう運動的なものが役場や社内で起こったりしているのをたまにビジネス誌なんかで目にすることがありますね。

 ですが、そういう、ちょっとぐらい仕事の手を緩めても十分なお給料がもらえる人たちが残業を減らして早めにうちに帰ることが重要なのではなくて、本当は残業や夜勤など身を粉にして働くことを余儀なくされている人たちの生活の質を高めましょうとか、余暇を増やしましょうということが求められるべきことなのではないかと思っています。

 とはいうものの、低賃金だから仕方なく長時間の労働を強いられている人たちにしてみると、「残業しないで早く帰れ」とか、「夜勤なんかするな」とか言われるのは、「明日からご飯食べなくていいよね」って言われているのと同じです。

パパの夜勤

パパの夜勤

(C)「セクシー心理学」

 彼らに言わせれば、残業・夜勤がないのは楽でいいけど、「じゃあ生活はどうしてくれる?」というところでしょうか。

◆ 最低賃金時給1,000円

 労働時間を短くしても十分な生活ができるようにと、民主党は最低賃金を時給1,000円に引き上げようとしているようですが、これにも賛成できません。

 なぜならば、企業が労働者に支払うことのできる賃金の総額の上限が変わらないならば、一人当たりの賃金を上げた場合に導き出される結果はたった一つだからです。つまり、労働者の数が減ります。

 その結果、少ない労働者でサービスの品質を維持できなければ、つぶれていく企業も増えるでしょう。賃金の上昇は、あくまで企業の利益の上昇の上に成り立たなければならないのです。その関係は絶対に崩してはいけません。

最低賃金

最低賃金

 それともこれは、高度成長期にあったかつての日本の「労働者の不足」が、最大のインセンティブとして労働の機械化に成功をもたらしたのと同じ状況を作り出して、政府が唱える「イノベーション」を加速化させようという狙いなのでしょうか?

 どちらにせよ、前にも書きましたが、それによって押しのけられる労働者もたくさんいることを忘れてはならないということです。

 もっと言えば、そもそも最低賃金という考え方自体が、産業によっては競争力をそいでいるのではないかとすら思っています。

 最低賃金時給1,000円が実現したらば、ここのところ、日本への回帰が指摘されている一部の製造業が、再び海外に生産の軸足を戻すのではないでしょうか。

◆ 家庭教育の質の向上

 ところで、考えてみると、男女の平等な社会進出とか、定年の撤廃とかって家庭教育の直接的な質の向上には逆行する考え方なのだと思います。

 絶対にそうかといわれると自信はありませんが、小さい子どもは親と、あるいはせめて祖父母と、一緒にいるのが、教育上一番いいんだと思います。

 確かに親たちは、保育士さんたちと違って、児童教育のプロではないですが、子どもたちを立派な人間にしたいという願いは誰よりも強いはずで、その熱意という点ではプロにも負けないからです。それが空回りして、時には不幸にも子どもを死なせてしまう人もいるようですが。

三世代同居

三世代同居

 ともあれ、そう考えると、何歳までそうだといいのかはよくわかりませんが、たとえば乳幼児は保育園に預けずに、日中は親と一緒に公園で他の子どもたちと遊ぶとか、もう少し大きくなって学校から帰ってきたらば親たちが家にいるとかいう状態が望ましいはずです。

 でも、男女が平等に社会進出しているから両親は家におらず、定年が撤廃されたのでおじいちゃんもおばあちゃんもやっぱり家にいません(実際はそこまで徹底されていませんが・・。)この状況で、誰が家庭教育を担うのでしょうか?

 このジレンマが、冒頭の「パパ残業 ママ夜勤 なくそう残業・夜勤」というスローガンを生み出しているのだと思います。

 家庭教育の充実という観点からすると、むしろ「子持ち世帯の主婦あるいは主夫の義務化」とか、「定年年齢引き下げによる孫育児参加の奨励」とか、「3世代未満の世帯の増税」とかをするほうがよさそうな気もしてきます。

◆ 蛇を先に殺すな

 話はかわりますが、私の友人に蛙がことのほか嫌いな人がいます。彼いわく、自分は「蛙に呪われている」のだそうですが、その真偽はともかく、彼が大きな池のほとりでこんなことを考えたそうです。

「この池にはたくさんの蛙がいて、それを食べる蛇もたくさんいる。人は気味が悪いからって蛇を先に駆除したがるけど、蛇だけ先に殺すと蛙が増えるし、それと一緒に実はねずみも増える。まず蛙を駆除すれば、自動的に蛇もねずみも減るのに。」

 蛙を駆除すれば虫が増えて、それはそれでどこかに悪影響を及ぼしそうな気がしますし、「蛙なんて絶滅すればいい」と常々言っている彼の発言なので、客観性は乏しいですが、一定の真理は含んでいると思います。

蛙の親子

蛙の親子

 つまり、気味の悪さで目立つ蛇を先に駆除してしまいたくなりますが、実際は何の害もないように見える(彼には悪魔に見えるそうですが・・。)蛙から駆除することが、結果としては効果的である場合があるということです。

 仕事をしながら、自分が、問題の本質を見極めずに、急場しのぎに目先の問題だけに対処しようとしているのに気づいたとき、彼の話を思い出して「蛇を先に殺すな」と自分に言い聞かせたりしています。

 彼のたとえに乗っかると、今の日本はたとえば「労働市場での男女差別」という蛇を先に殺してしまった状態ということになります。

「女性が社会に参加していない」とか、「家事に縛られている」とかそういうマイナスな捉え方が先行して、「家庭教育という重要な役割を担っている」という側面を無視して、ことが進められてしまったのかなと最近思うようになりました。

 一度狂ってしまった生態系は、どうしたらば正常な状態に戻せるんでしょうね。

鞍馬【2019.11.28 リニューアル・アップ】

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