「windblue」 by MIDIBOX


まだまだ新型コロナウイルスによる感染が「収束」というわけにはいかないようだし、「2次感染」の恐怖がすでに現実のものとなっている地域も見られ始めてはいる。

 しかし、もう限界とばかりに緊急事態宣言の解除が5月26日にアナウンスされ段階的緩和がロードマップに従って始まっている。

 だが、ワクチン開発や治療法が確立されない限り、かつてのような生活が戻ってくるのは「夢」だという認識がまず必要になってくる。

 これを欧米では「ニューノーマル」と呼んでいるが、ファッション業界でも特に実店舗での接客についてはこの「ニューノーマル」が必要不可欠のルールになっている。

「入退店時の手指の消毒徹底、マスク着用(フェイスシールドも)、販売員のソーシャルディスタンス確保、手などの直接接触の禁止、試着商品の消毒」といったマニュアルである。

 こんなにショッピングが面倒臭いのなら、客たちがネットショッピングに大量に移行していくのも当然だろう。

 Eコマース=ネットショッピングの大いなる優位性が続いていくだろう。

「リベンジ消費」という物騒な言葉が緊急事態宣言解除後に使われ始めている。

 自粛生活が2、3カ月続いて、その間に鬱屈した消費欲を一気に発散させようという動きのことだ。特に若者を中心に見られる現象のようだ。

「リベンジ消費」

 感染「第2波」の引き金になることもあるが、このコロナ・パンデミックがなくても、萎縮しがちだった消費がコロナのおかげで一気にスイッチが入って爆発するようであればそれは「災い転じて福」ということにもなるがやはり一時的な現象で終わるのではないだろうか。

 かなり長い期間、蒸発してしまった消費の回復は容易ではなく、消費低迷の長期化は避けられないだろう。

 今回の「コロナ・パンデミック」の最大の教訓は、こうしたパンデミックはこれからも頻繁ではなくとも確実に起こり得るということだろう。痛感したのは医学の意外な無力と政治の変わらない無能ということである。

 自分の身体は自分で守るしかないという当たり前の原則とともに人間は助け合わないと生きていけないという絆の大切さも思い知らされた。

 もうひとつ今回の「コロナ・パンデミック」で株を下げたのはアメリカだということを記しておきたい。

 5月29日正午時点厚労省まとめのデータだが、今回の新型コロナウイルス のアメリカの感染者数は172万人で死者は10万人を突破した。

 これは国の防疫体制の欠陥というよりも、国自体に何か重大な欠陥があるのではないかというレベルの話ではないだろうか。

 今回の「コロナ・パンデミック」について、中国が仕掛けたウイルス戦争だという荒唐無稽な馬鹿話を信じるなら、感染者8万人、死者4634人の中国の大勝利ということになる。

 それとは別にアメリカの第一次世界大戦での戦死者は11万7000人(ちなみに第二次世界大戦の戦死者数は29万人)だが、この数字を今回のコロナ・パンデミックの死者が超えれば、トランプ大統領の責任問題になるという歴史学者の意見があることを記しておこう。

 もう11万7000人という数字に届くのは時間の問題で、トランプ大統領の責任はすでに明らかだと思うが。

 ファッション業界でも、最近デザイナーを中心にして「ニューノーマル」が表明されている。あまりにも肥大化したファッション・ビジネスに対する反省がその根幹にある。

「グッチ(GUCCI)」のクリエイティブ・ディレクターであるアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)が公式インスタグラムで「コレクションは年2回」発言が注目されている。

 ミケーレはこれまで年5回発表していたこともあるファッションショーを減らして年2回まで絞り込むと発言している。

「クルーズ、プレフォール、プレスプリング、カプセル・コレクションなんていう言葉は必要あるのだろうか?」という言葉がミケーレから投げかけられている。

アレッサンドロ・ミケーレ

 こうしたサブ・コレクションは、ブランドの存在感を印象付けるためのプロモーションとして活用されると同時に、コレクションピース(年2回のブランドのシーズンコンセプトを明確にするためのファッションショーに出品される商品)ではない、ビジネスピースを提案する場として活用され、大きな売り上げ貢献をして来たのである。

 これを無くすということはどういう結果になってくるのか。その解決策をミケーレはすでに持っているのだろうか。注目されるところではある。

 なお、「グッチ」は7月17日に、かつて「クルーズ」と呼んでいたコレクションをデジタル配信する予定だ。

 また、今後のコレクション発表については、7月14〜17日にメンズをデジタル配信し、さらに9月22〜28日にメンズとウィメンズの合同発表を予定しており、その発表方法について検討に入っているという。

 少なくともミラノ・コレクション(ミラノ・ファッション・ウィーク)には参加しない声明を出している。

「プラダ(PRADA)」と並んでミラノコレの大黒柱である「グッチ」を失ってミラノコレはどうなるのか注目されるところではある。

 このミケーレのインスタグラム発言とほぼ同時期に、米英仏を拠点にするデザイナーら10人が、ファッション産業に対する「生産タイミングの変革及びサステイナビリティ(持続可能性)への転換を提案し、同意の署名を募っている。

 発起人はデザイナーのドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)で、マリーン・セル(Marine Serre)、クレイグ・グリーン(Craig Green)、トリー・バーチ(Tory Burch)や香港拠点のレーン・クロフォード百貨店のアンドリュー・キース(Andrew Keith)会長などが10人に含まれており、ドリスは「ル・モンド」紙のインタビューで発言している。

(※右の背景画像)⇒

ドリス・ヴァン・ノッテン

 発言の骨子は
①その季節のファッションを適切なタイミングで売る。
②セールを適正な時期に行う。
③生産調整を的確に行う。
④素材を有効に使う。
⑤無駄な出張を控える。
⑥ショーの形式を見直す。などだ。

 なおこの声明に対して8日間で世界の600人以上が賛同の署名を行なっているという。

 ウィズ・コロナ時代にあって、ファッション業界ではまずデザイナーが立ち上がっているようだ。「ニューノーマル」の模索は続く。

(2020.6.5「岸波通信」配信 by 三浦彰 &葉羽

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