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渋谷駅を中心に行われている渋谷再開発は100年に一度の大改造といわれている。

 2013年の東急東横線の副都心線への乗り入れで、今まで渋谷で降りていた東横線沿線の住人がかなり新宿に流れた。

 実際乗り入れ前の2012年のJR渋谷駅の1日の乗車人数は41万2000人で新宿、池袋に次いで第3位だったが、2018年は37万人まで減少し、東京、横浜、品川に抜かれて第6位になった。

 渋谷駅周辺の改造工事の影響もあって、渋谷の街にとっては、この7年間は大きな打撃になった。その渋谷の巻き返しがいよいよ始まる。

高層複合施設/渋谷ヒカリエ

 渋谷駅前の再開発は、ヒカリエ(2012年完成)、渋谷キャスト(2017年4月完成)、渋谷ストリーム(2018年9月完成)、渋谷スクランブルスクエア(2019年11月完成)、渋谷フクラス(2019年11月完成)と完了して、大物としては、三井不動産の開発で公園、ホテル、商業施設、駐車場を低層複合施設としてまとめたミヤシタパーク(旧宮下公園)が今年6月に開業。また桜丘口地区の開発が2023年に完成する。

 もちろん渋谷の大改造は、駅前だけではない。公園通りでは昨年11月22日に最大の注目であるパルコ(旧パルコ1とパルコパート3が合体)がリニューアルオープンした。(※右の背景画像)⇒

 今回の渋谷パルコの改装について責任者の泉水隆(せんすいたかし)常務は「今回の改装ではあえてマーケティングを行わなかった。

 おしゃれなライフスタイルを享受している女性というターゲットを決めてみても何か違うなということになった。

 多方面にパルコへの期待や希望を聞いたが、結局自分たちの目利きを信じた品揃えや発信を進めることにした」と語る。マーケットが厳しさを増しているのに、なかなか大胆でアグレッシブな考え方だ。

泉水隆常務

 たとえば、新生パルコの地下1階の「カオスキッチン」と命名されたレストラン街には「米とサーカス」というジビエと昆虫食のレストラン(本店は高田馬場)がある。

 ヤモリやサソリやオオゾクムシやカラスなどがから揚げや串焼きで供されている。現在日本で一番購買力があるといわれる「おしゃれなライフスタイルを享受する女性」からは最も遠い存在ではないのだろうか。

 ここには、ゲテモノと呼ばれようと珍しいものを生活者に知らせようというパイオニア精神がある。さらにこの「カオスキッチン」には「Campy!bar」というオカマ(女装)バーがあり、朝の5時まで営業している。

 ファッションについては、ブランドの育成を目的にした編集売り場のPORT PARCO(4階)や次世代デザイナーやブランドのインキュベーションを目的にしたGEYSER PARCO(3階)に驚かされる。

 ブランドの規模の大小、有名・無名に関係なくいかに面白く独創的かの基準で選ばれている。簡単に言ってそんなに売れる商材ではない。

 もちろん、こうしたブランドだけではなく稼げるブランドの「グッチ」「ロエベ」(1階)などのラグジュアリーブランドや人気のマッシュホールディング社やセレクトショップのベイクルーズのブランドもバランスよく配置されている。

カオスキッチン

 同店は、ファッション、アート&カルチャー、エンターテインメント、フード、テクノロジーの5つ要素から構成されている。

 その中でアート&カルチャーについては、「PARCO MUSEUM TOKYO」(4階)と地下1階の「GALLERY X」が担うが、これは1973年にアート&カルチャーを発信するファッションビルというパルコ開業時のDNAを受け継いでいる。

 現在、新設の商業施設ではデジタルテクノロジーをどう活用するのかは大きな課題だが、新生パルコでは現場のショップスタッフの接客を最大化することが最大課題になっている。

 たとえば5階の「パルコキューブ」では、まず入り口にある巨大なサイネージで出店している11ショップの商品データや在庫を見られる。

パルコキューブ

 商品と在庫データは各社の直営ECサイトと連動しており、各ショップは店頭に置く在庫を減らせると同時に、機会損失も防ぐことができる。実物を見たい客は各ショップへ移動する。

 この他にも魅力満載だが、11月22日のこのパルコオープン以来、公園通りの通行量は3倍以上になったと言われている。

 オープン景気があるので、その真価が問われるのは2年目以降ということになる。商業施設の同質化が著しい現在、新生パルコの健闘を期待したい。

(2020.4.3「岸波通信」配信 by 三浦彰 &葉羽

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