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前回に引き続き最近私が読んだ本の中から気になったものを紹介する。

 正月休みに観たNHK教育テレビの深夜討論番組で紹介されていたのでアマゾンで買ってみたのが、星海新書(星海社は講談社の100%子会社)の1冊で「武器としての決断思考」という刺激的タイトルの本。(右写真⇒)

 すでに20万部売れているという。

 著者の瀧本哲史氏(↓)は東大卒業後にマッキンゼーに入社しその後投資家に。

 現在京大客員准教授として「意思決定論」「起業論」「交渉論」を講じ、教室から受講者が溢れるほどの人気講義になっているという。

著者:瀧本 哲史

著者:瀧本 哲史

 「戦うことを選んだ次世代の仲間に武器を配りたい」と瀧本氏。

 前回に紹介した「絶望の国の幸福な若者たち」(古市憲寿著、講談社)とは、同じ講談社の本でもエライ違いである。

 多摩川の川原で気の合った仲間と休日にバーベキューする草食系フリーターの幸福に背を向けて、「坂の上の雲」を目指す肉食系の若者に向けた本である。

 この本、まさかなんとなく手に取る者はいないだろうし、著者がいうように「戦うことを選んだ」者のための本である。

 また本書で「世の中を変えるためには、知識を持っているだけではダメ」(P29)とあるが、すぐ後に「もちろん、知識すら持っていないのは論外」とダメ押しがある。

 本書は安直な人生論的記述はほとんどなく、「意思決定論」というよりもディベードで勝つための方法論が大部分を占めるメソッド本なので、刺激的なタイトルの割には意外に面白くはない。

 ハンプティダンプティみたいな瀧本氏の風貌とその経歴と本のタイトルに大分騙されたかもしれない。

ハンプティダンプティ

ハンプティダンプティ

 そう言えば、最近駅張りで見かけたコピーライター養成学校の生徒募集の広告のコピーに「コネも学歴にも頼らず私は生きてみせる」というのがあった。

 こんな酷いコピーの広告を平然と公衆の場に晒す養成学校なら行かないほうがイイと思うのだが、このコピーに引っかかる輩も結構いるんだろうな。

 もちろんこの本はそれほど酷くはない。

 「サンクスコストに陥るな」(八場ダムではないが今まで投資した資金と無駄にしたくないばかりに判断が歪むようなこと)とか「どうしても過去の重みに捉われ未来を軽視する傾向を自覚せよ」とか「エキスパートの価値は低い。プロフェッショナルを目指せ」とか響く部分がないではない。

 しかし、瀧本氏が投資事業でどんな成果を生み出しているのかは知らないが、この本で学んだ若者が金融工学を駆使して第二のサブプライムローンを発明しないと誰が言えるのだろうか。

 私が見聞きしてきた起業家とか投資ファンドのプレイヤーがどれほど劣悪な哲学を持っていたかを思うと、こうした武器(方法論)ではなく、「道」も合わせて講じなくては片手落ちというものだろう。

 瀧本氏には「武器としての教養」を論じた著作もあるらしいので期待しないで手にしたいと思う。

 まさか拝金哲学ではないと思うが、ハンプティダンプティのことなのでなんともいえないが(笑)。

                

(2012.1.31「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)


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