「windblue」 by MIDIBOX


日本の百貨店には「特選」と呼ばれるカテゴリーがある。

 特別セレクションという意味だが、現在その中心的存在は欧米のラグジュアリーブランドである。その売り上げの中心はプレタポルテと呼ばれる洋服ではなくハンドバッグである。

 その勢力図は、ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネルの3強が圧倒的存在だが、この3年ばかりグッチがこの3強を凌駕する人気だ。ついでプラダ、ディオールが続いている。

 ついでにこの特選のハイジュエリーについて書くと、カルティエ、ティファニーの2強にブルガリを加えて3強と呼ばれていたが、この10年ばかりは「アルハンブラ」というラインが大ヒットしたヴァンクリーフ&アーペルがブルガリに肉薄している。

「ヴァンクリーフ&アーペル」の「アルハンブラ」のペンダント
34万8545円(税抜き)

 ラグジュアリーブランドは、エルメスなどの例外を除き、2008年のリーマンショックの後遺症があって、世界的に業績が低迷したが、中国市場が大きく成長して、低迷を脱した。

 日本市場では2014年あたりから急増した来日外国人の日本国内での買い物の対象にラグジュアリーブランドがなったことで、2007年のピーク売り上げを超えるブランドが多くなった。

 特に中国国内の税金の関係で、自国で買うよりも日本で安く買える中国人のラグジュアリーブランド買いは旺盛で、日本のラグジュアリーブランド販売の救世主になった。

 もっともインバウンド消費の恩恵に預かっていたのは、銀座、新宿、心斎橋、難波などの限られた地区の店舗だったが、ここにきて一服してその伸長も急激ではなくなった。

 各百貨店では日本人の購買をもう一度重視するという方針が打ち出されている。

「ディオール」のブックトート(ラージサイズ)
29万円(税抜き)

 ファッション専門紙の週刊WWDジャパンは今年前半で売れたラグジュアリーブランドのアイテムを8月26日号でピックアップしている。

 昨年後半まで、爆発的な人気を誇ったバレンシアガのキャップスニーカーやミニ財布などのロゴ使い商品、グッチのやはりロゴ使い商品などはさすがに落ち着いたがそれでも前年比10%以上の伸びを見せている。

 この2ブランドに関しては、20歳代、30歳代の若年層の取り込みに成功しているのが注目される。

 バレンシアガのデムナ・ヴァザリア、グッチのアレッサンドロ・ミケーレの両デザイナーともに、ラグジュアリーブランドであるにもかかわらず、ストリート感覚をベースにしたロゴ使いの低価格商品を数多く提案したのが、若年層に受けたようだ。

 ストリート感覚の今年前半のヒット商品としては、エレガンスハイヒールの代表的存在である「ロジェ ヴィヴィエ」のスニーカーが挙げられるが、なるほどラグジュアリーなストリート感覚表現の分かりやすい例である。

 またこの路線では、日本のオンワードホールディングスが保有するラグジュアリーブランドのジル・サンダーのバッグの「タングル」シリーズのヒットも挙げられる。

「ロジェ ヴィヴィエ」のスニーカー「ヴィヴラン」
12万9000円(税抜き)

 2017年4月に新たにクリエイティブディレクターに就任したルーシー&ルーク・メイヤー夫妻のうち、夫ルークはストリート・ブランドの代表的存在であるシュプリームのクリエイティブディレクターだった人物。ちなみ妻ルーシーはディオールなどのデザインチームにいた人物だ。

 現在ファッションは、そうしたストリート系からエレガント系への転換期にあると言われているが、エレガント系ラグジュアリーブランドでは、ディオールのブックトートが久方ぶりの大ヒット。

 ディオールはこれをきっかけに、レディ・ディオールやサドル・バッグといったかつてのヒット・バッグも復活しているという。

 全般に言えることはロゴ商品が売れていること、ビッグブランドへの購買の集中が起こっていることだ。

                

(2019.10.25「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

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