「windblue」 by MIDIBOX


私の生まれは東北の福島市である。

 このあたりでバス会社などを経営するあちらではちょっと有名な企業があって、その社長の愛人がTVなどにもよく出ていた有名女優だと母から聞かされたときは、子供ながらに驚いた。

 ズーズー弁の見てくれも決して良くないその社長と美しい有名女優が愛人関係だなんていうのは子供にはちょっと想像が難しかった。

 母は愛人ではなく「二号さん」と呼んでいたが、公演もないのによく福島にやって来ていたそうである。

    

 またこの選挙区の某代議士にも二号がいて、病弱の正妻に代わって選挙運動を助けていて、当選してTVにこの代議士が映ったときには、この二号さんがちゃんと隣にいたのを教えてくれたのも母であった。

 この他にも旦那の浮気に悩む近所の奥さんの愚痴とか、私の母はその筋の情報には非常に詳しかった。

 母の名誉のために書いておくが、私の知る限り、私の母にはその手の噂は皆無だった。

文春砲

 最近「文春砲」とか言って、芸能人、果ては国会議員まで不倫報道が花盛りである。

 いささか食傷気味であるが、最近の橋本健・神戸市会議員&元スピード今井絵理子、山尾志桜里・代議士の不倫報道には驚いた。

 税金を使う生業の人々の不倫は許さないという正義感が底流に流れているようである。

 マスコミは第4の権力と言われるが、いまや不倫警察になり果てている感がある。こうした不倫報道は、関係者の「チクリ」によるものが大半であろう。

 週刊誌側としては、不倫報道で有名になればなるほど、「チクリ」が増えていくわけだから困ったものである。

 しかし週刊文春を買わなくともTVやSNSで事細かに紹介してくれるので、それで週刊文春の部数が上がっているのかどうかは怪しい。私などは電車の中刷り広告で十分である。

今井絵理子代議士

 しかし、この不倫報道の嵐をどう見たらよいのか。日本人の性欲はそんなに増大しているのだろうか。

 冒頭から書いているように昔から不倫、浮気なんてものはそれなりにあったわけであるから、理由として考えられるのは:
①「チクリ」が増えた
②週刊誌ジャーナリズムが行きづまっている
③不倫が日常的になった。倫理観の低下
~まあ、こんなところだろう。

 ①は嫌な社会になっているなあという感じである。

 ②は政治腐敗や権力者の不正に対して国民が興味を失っている社会で、週刊誌ジャーナリズムが目を付けた苦肉のテーマなのであろう。情けないなあというのが実感だ。

 最大の理由は③だろう。「不倫は文化である」と宣わったのは石田純一だが、世の中がどんどんカジュアルになっていく時代でも、不倫というハレの場(?)にフード付きジャージーにGパンで出かけていく輩はいないだろうから(ゲス川谷や雨上がり決死隊宮迫は例外!)、不倫文化は衰退し続けるファッション業界にとっては、明るい話題なのではないだろうか。

石田純一氏

 特にチョイ悪オヤジ・スタイルを世に広めた「レオン」(主婦の友社、創刊は2001年9月24日)は、不倫文化の向上に貢献したMVM(モースト・ヴァリアブル・マガジン)である。

 あれから16年も経っているのである。不倫が日常的になって当然だと思う。

 ある統計数字(第一生命経済研究所 門倉貴史)によれば日本における不倫関連のマーケット規模は23兆円におよび、地下経済市場の20兆円を上回っているというから驚きだ。

 特に生活に余裕のある50~60歳代男性が、「トム・ブラウン」のスーツに「ルイジ・ボレッリ」のシャツをラフに着て、「クロムハーツ」のリングを両手に5つほど嵌めて、「ベルルッティ」の茶靴かなんかを素足で履いて、ホテルの薄暗いバーのカウンターでドライ・マティーニなぞを飲んで獲物を待っている姿を連想して欲しい。

「クロムハーツ」のリング

 こういう人種は確かにここ最近の産物で、不倫文化の底上げを推進している。

 もっとも「レオン」なんかよりも、ED薬の普及が果たした役割の方がはるかに大きいと私は思っているが。

                

(2017.12.3「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

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