「windblue」 by MIDIBOX


今回は、最近観た映画シリーズ。といっても、劇場ではなくテレビで放映された往年の名画であるが。

    

①「日の名残り」(1993年)

 10月の3連休に観た映画その1。

 カズオ・イシグロのノーベル文学賞受賞は意外。英語で書いている小説家なのに、日本人枠だろうから、これで村上春樹の受賞はしばらくないのでは。選考委員によほどのムラカミ嫌いがいるのではないだろうか。

 ハヤカワ文庫で「日の名残り」を読んでいたが、「前衛」が優遇されるノーベル文学賞では異例の分かりやすい小説だ。

「日の名残り」

 映画は名匠ジェームズ・アイボリー監督(「眺めのいい部屋」など)で1993年に公開。9月にNHKBSで放映されたもの。原作には及ばないが、秀作だ。

 アンソニー・ホプキンス(写真正面)が演じる執事がちょっと彼の代表作「羊たちの沈黙」のレクター博士を連想させてアクの強さが鼻につくが、エマ・トンプソン(ホプキンスの右隣)の女中頭が好演で見応えがある。

②「若者のすべて」(1960年)

 ルキノ・ヴィスコンティ監督の「若者のすべて」(1960年)は、この監督の出世作。

 彼はイタリアの2大巨匠の一人だが、もう一人の巨匠のフェリーニにも「青春群像」という出世作があるが、2人とも青春がテーマの群像劇で既に本領を発揮している。

「若者のすべて」

「若者のすべて」はなんと言ってもアラン・ドロン(写真右端)の美男子ぶりが全編を通じて見事に描かれる。

 80歳を超えた彼は最近引退表明したが、60年代の彼は天下無敵の青春スターだった。3時間という長尺だがダレない。

③「奇跡の丘」(1964年)

 やはりNHKBSで放映された映画。パゾリーニ監督の出世作である「奇跡の丘」(1964年)。

 パゾリーニの監督作品は殆ど観ているが、これだけは観れずにいたので、NHKBSに感謝。

「奇跡の丘」

 無神論者でコミニュストのパゾリーニがなんでマタイ伝に基づくキリストの生涯を描いたのかは謎だが映像はモノクロで恐るべき迫真力。

 老マリアはパゾリーニ監督の実母だ。音楽はバッハのマタイ受難曲をベースに黒人霊歌やブルースを交えたものだが、これが素晴らしい。

 パゾリーニは1975年に「ソドムの市」撮影後に出演していた少年に撲殺されて53年の生涯を閉じた。少年に性的悪戯をしていたとされるが、真相は謎だ。

④「マイ・フェア・レディ」(1964年)

 これもNHKBS放映を録画したもの。ジョージ・キューカー監督による1964年のミュージカル映画「マイ・フェア・レディ」。

 ブロードウェイの舞台では、イライザ役はジュリー・アンドリュースが演じたが、必ず当たる主役ということでオードリー・ヘップバーンが起用された。

「マイ・フェア・レディ」

 しかし原作「ピグマリオン」ではイライザは21歳の花売り娘。当時35歳のオードリーの起用には疑問の声もあった。

 私も同感だ。やはり、この映画でのオードリーの色気は30女の色気だろう。全体的に演技もウルサイ。このあたり、オードリーファンの岸波氏の意見を聞きたいが。

 それ以上にヒギンス教授役のレックス・ハリソンが鼻持ちならないイヤーな男に思えるのだが。こんな男に惹かれる花売り娘なんかいるわけないと思う。

 余談だが、同じ年の「メアリーポピンズ」に主演したジュリー・アンドリュースは見事にオスカー主演女優賞して溜飲を下げた。

 オードリーは、「マイ・フェア・レディ」(作品賞は獲った)でオスカー主演女優賞を獲れず、周囲にあたりちらした映像が残っているという。

                

(2017.10.15「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

PAGE TOP


banner Copyright(C) Miura Akira&Habane. All Rights Reserved.