復興食堂 (詩:葉羽)
ラーメン屋を始めたのは十年前
場所は 家内の実家がある大船渡
秋刀魚の匂いがする街が
最初は 好きになれなかったけれど
ヨソ者だから できる事もあるはず
そんな想いで 「黒船」と名付けた
この街ならではの食材・・
そうか 秋刀魚があったじゃないか
秋刀魚のダシが評判になった頃
3月11日に そいつはやって来た
家は跡形もない・・
流された町を見て 心が折れた
もう店を閉めて 町を去るしかないのか
せめて最後の恩返し
そうだ 避難所で
温かいラーメンを振る舞おう
ラーメンを出した手を 握り返された
ありがとう こんな美味しいものはない
ラーメンを啜るみんなは 涙を浮かべていた
心が熱くなった・・
よし もう一度・・
3月末に ようやっと店を再開
ラーメンは150円引きで行くと決めた
それからの毎日は 死に物狂い
ええい この心まで奪われてたまるか
そんなある日
彼が 久しぶりにやって来た
「釣りはいらない」
・・懐から一万円札を出した
「最高のラーメンだったよ」
呼び止める声も聞かず 去って行った
心の中で手を合わせた
・・彼は店の常連客だった
そうか
自分は何も 失ってなんかいない
この町があり
この店があり
このお客さんたちがいる
岩手県大船渡市
復興食堂「黒船」!
今日も! 今日も元気です!
(※背景画像:避難所で振る舞われた「黒船」のラーメン)⇒ |