「風立ちぬ」より忘れじの台詞 (詩:葉羽)
絵の才能に恵まれ
夢見る少女だった菜穂子は
震災で実家を失い
結核に蝕まれて夢を失う
篤志家の黒川邸に身を寄せた彼女に
次郎が結婚を申し込みに来ると
菜穂子は結核を告白し
「病気を治すまで待ってくれますか」
と切ない決意を込めて問う
「もちろん、100年だって待ちます」
次郎は菜穂子を真っ直ぐに見つめて言う
そうして結婚を許された二人だが
菜穂子の病状はますます悪化し
サナトリウム入所を余儀なくされる
次郎の試作機が完成し
飛行試験を迎える朝
既に病状が深刻化していた菜穂子は
ひとりサナトリウムを抜け出し
精一杯の身繕いをして
黒川家で次郎を見送る
「行ってきます」
「行ってらっしゃい、あなた」
それが二人の最後の会話となった
菜穂子は置手紙を残し
密かに次郎のもとを去る・・
黒川家の婦人が涙をこらえながら呟く
「美しいところだけ好きな人に見てもらったのね」 |