楽園の大河 (詩:葉羽)
ヒンドゥーの聖地バラナシ
ヴァルナ川とアッスィ川に挟まれて
その名が付いたという
ヒンドゥーの教えでは
人はみな輪廻の度 大きな苦しみを味わい
それに耐えなくてはならない
しかし聖なるガンガーに抱かれた
このバラナシで死んだ者だけは
その苦しみから解き放たれるのだという
輪廻からの解脱
それこそが至福の願いなのだ
だからこの街には毎日
インド中から遺体が運び込まれ
ガートで荼毘に付され ガンガーへ放たれる
死期を悟った者たちもまた
祈りとともにバラナシを訪れ
この楽園で最後の刻を待つ
「バラナシはガートのために存在する街」
かつてガートを移転しようとした英国政府も
市民のそんな声に折れるしかなかった
幾億の魂を抱き
母なるガンガーは
今日も静かに流れている |