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 #244 やさしいうそ

by 葉羽
Photo by 大和伸一 "錦秋の谷"
BGM by 甘茶の音楽工房 "忘却のパヴァーヌ"
Site arranged by 葉羽

 

◆おとうさんにもらったやさしいうそ (1年 佐藤恒紀)

 ぼくのこころにひびいたことばは、「おとうさんはちょっととおいところでしごとをすることになったから、おかあさんとげんきにすごしてね。」です。

 そのときぼくは二さいでした。とても小さかったのでちょくせついわれたのはおぼえていませんが、いってくれたときのどうががおかあさんのスマホにいまでものこっているので、すきなときにきくことができます。

 このふつうにおもえることばがぼくのこころにひびいたりゆうは、じつはこれがおとうさんのついたうそだったからです。

 このことばの一しゅうかんごに、おとうさんははっけつびょうでしんでしまいました。そして、このことばをおとうさんがのこしたのはびょうきがわかってにゅういんした日でした。

 おとうさんは、あえないあいだにぼくがかなしまないように、わざとうそをつきました。うそはふつうよくないけれど、これは、おとうさんがぼくのためについてくれたやさしいうそだとおもいます。

 このことばをどうができくと、おとうさんにあってみたくてすこしかなしいきもちになります。でもかなしいだけじゃなくて、かなしませないようにうそをついてくれたおとうさんのやさしさをおもって「がんばろう!」とおもえます。

 おとうさんがしんでしまったことはしっているけど、おとうさんのうそがほんとうになって、いつかよるおそくにドアのまえで「ドアをあけて。かえってきたよ。」といっているおとうさんにあいたいです。こうおもえるのもおとうさんのやさしいうそのおかげです。

 ぼくからおとうさんにつたえたいことがあります。「おとうさんうそがばれてるよ!だってまわりにびょういんのどうぐがいっぱいあるし、おとうさんがよこになっているし、めからなみだがちょっとだけでているし、こえがさびしそうだから。」でもぼくは、だまされているふりをしつづけようとおもいます。

 おとうさんがやさしいうそをついてくれたおかげで、ぼくのこころはつよくなれています。これからもおとうさんのことばをまもっておかあさんとげんきにすごしたいです。

 おとうさんやさしいうそをありがとう。

【第12回 日本語大賞 文部科学大臣賞 受賞作品
 茨城県古河市立古河第二小学校一年佐藤 亘紀(さとう・こうき)】

葉羽 「おとうさんにもらったやさしいうそ 」について

お友達がSNSに上げて「いい話だな」と思ったので調べてみるとNPO日本語検定協会主催の「日本語大賞」で文部科学大臣賞を受賞した小学校一年生の作文でした。

たいへんな文章力に感心しました。僕は「作文」が苦手でいつも何を書いていいのか分からず「未提出」が多かったですから(笑)

 

 


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