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 #185 中澤系歌集 uta0001.txt

by 葉羽
Photo by 大和伸一「石像」
BGM"Please Don't Go" by Blue Piano Man
Site arranged by 葉羽

 

◆3番線快速電車が通過します理解できない人は下がって

◆そとがわにはりめぐらせてある甘いみつをからめた鉄条網に

◆はなれゆく心地したりき快楽のためにかたちを変えたる時に

◆かみくだくこと解釈はゆっくりと唾液まみれにされていくんだ

◆出口なしそれに気づける才能と気づかずにいる才能をくれ

◆ハンカチを落とされたあとふりかえるまでをどれだけ耐えられたかだ

◆ぼくたちはゆるされていた そのあとだ それに気づかずいたのも悪い

◆キャンディーのいくつか並行世界(パラレル)ではたぶんつまみ上げられなかったほうの

◆粘膜の上を空滑りしてゆくひとかけの擦過傷を残して

◆信号が変わる間際の横断歩道 身を賭して駈けたか、人は

◆いや死だよぼくたちの手に渡されたものはたしかに癒しではなく

◆ぼくたちはこわれてしまったぼくたちはこわれてしまったぼくたちはこわ

 

 

 

葉羽 中澤系 氏について

 1970年に茅ヶ崎市に生まれ、1998年に書いた最初で最後の詩集「uta0001.txt」で未来短歌会「未来賞」を受賞。2003年より進行性の難病である副腎白質ジストロフィーに冒され、自分の意志を表示することすら困難な状態に陥り38歳で逝去。この、ひたすらに暗く、それでいて刃のように心をえぐって来る言葉たちは、まるで精神世界のディストピアのよう。衝撃的でした。再販時、歌人の岡野大嗣氏が寄稿した本の帯にはこうあります‥『中澤さんの歌は過去、現在、未来を問わず、その瞬間の「今」を刻んで呼吸を促す――くらがりに射す、針のようなる光となって』

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