「パパ!あたし、およめに行くのやめる!!
わたしが行っちゃったらパパ寂しくなるでしょ?これまでずっと甘えたりわがままいったり・・。
それなのに私のほうは、パパやママになんにもしてあげられなかった」
「とんでもない、君はぼくらに素晴らしいおくり物を残していってくれるんだよ」
「おくり物?私が?」
「そう、数えきれない…ほどのね。最初のおくり物は、君が生まれてきてくれたことだ。午前三時ごろだったよ。君の産声が天使のラッパみたいに聞こえた。あんなに楽しい音楽はきいたことがない」
「病院を出たとき、かすかに東の空が白んではいたが、頭の上はまだ一面の星空だった。
この広い宇宙のかたすみに、僕の血をうけついだ生命がいま、生まれたんだ。そう思うと、むやみに感動しちゃって。涙がとまらなかったよ。
それからの毎日、楽しかった日、みちたりた日びの思い出こそ、きみからの最高のおくり物だったんだよ。
少しぐらいさびしくても、思い出があたためてくれるさ。そんなこと気にかけなくていいんだよ」
「のび太くんを選んだきみの判断は正しかったと思うよ。
あの青年は人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことができる人だ。それがいちばん人間にとってだいじなことなんだからね。
かれなら、まちがいなくきみを幸せにしてくれるとぼくは信じているよ」
(ドラえもん「のび太の結婚前夜」/静香ちゃんとお父さんの会話より) |