◆この曲と決めて海岸沿いの道とばす君なり「ホテルカリフォルニア」
◆「また電話しろよ」「待っていろ」いつもいつも命令形で愛を言う君
◆愛持たぬ一つの言葉 愛を告げる幾十の言葉より気にかかる
◆潮風に君のにおいがふいに舞う 抱き寄せられて貝殻になる
◆「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの
◆愛ひとつ受けとめかねて帰る道 長針短針重なる時刻
◆君の髪梳かしたブラシ使うとき香る男のにおい楽しも
◆オクサンと吾を呼ぶ屋台のおばちゃんを前にしばらくオクサンとなる
◆この部屋で君と暮らしていた女(ひと)の髪の長さを知りたい夕べ
◆愛人でいいのとうたう歌手がいて言ってくれるじゃないのと思う
◆気づくのは何故か女の役目にて 愛だけで人(ひと)生きてゆけない
◆さよならに向かって朝が来ることの涙の味でオムレツを焼く
(俵万智『サラダ記念日』より) |