◆「査証 在カナウス領事代理杉原千畝」とペン書きの字が力強い。古びた一通の査証(ビザ)がイスラエルのホロコースト記念館で永久保存されることになった。
◆第二次世界大戦下のリトアニア・カナウスで、故杉原氏がナチスに追われたユダヤ人のために発給した日本通過のビザだ。残されたその一通を手に、妻、幸子さん(80)の感慨はさぞ深かったことだろう。
◆本国の訓令に背いた独断のビザ発給は、昭和15年8月の約一ヶ月続く。それが6千人の命を救ったことは、近年ようやく知られてきた。
◆ビザはすべて手描きだった。「知らず知らず手に力が入る。万年筆が折れペンにインクをつけて書く。一日が終わると夫はぐったり疲れ、そのままベッドに倒れ込む」そんな日々だったと幸子さんは回想している。
◆うれしいことに、杉原氏が今春から高校一年の英語教科書「NEW COSMOS」に登場する。氏の故郷、岐阜県の英語教師からの尽力で8ページにわたり、その業績が紹介される。
◆戦後、イスラエル政府から「国家の偉大な恩人」として表彰されたこと、リトアニアの首都の道の一つが「スギハラ通り」と名付けられたこと…。この教科書の記述を通じて、杉原氏の勇気が若い世代の心に響くことだろう。
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