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"ホシノキセキ" by -WindSphere-

 

(丸山芳子)“精神の<北>へvol.3”のトークセッション2日目は、アーティストがリサーチした異なるフィールドの実践者が登場。アーティストの体験を織り込みながら、そのフィールドを引き出していく3組のクロストークです。まずは一組目をご紹介。

 

【2014/9/7】異分野クロストーク 1『早稲谷へ行ってみよう〜』
 小野良昌(アート)x 長谷川浩(有機農業)

小野:今日のお客さんの中で農業をやっている方は、思った以上に少ないのが現実です。僕自身でも農業に対する距離感があって、なかなか分からないと思っていた中で、長谷川さんに教えてもらったイギリスのドキュメンタリー番組「未来への農場」がYouTubeで見れます。なぜ長谷川さんが今早稲谷で農場をしているか分かるかと思います。なぜ自分の実家である農場を継ぐことにしたか、どんな農場にしたいかを実践しようとしている女性のドキュメンタリーです。農学博士の長谷川さんは、何をご専門にしていたのですか?

長谷川:有機農業という、除草剤の農薬を使わなくても相応のお米がとれるような開発に取り組んでいます。地球上に今70億人を超える人がいて、非常に文明的な生活をすることは、地球にある資源をいっぱい使って自然を酷使しているのです。このまま行ってしまうと石油も少なくなって(価格が)段々高くなると、便利な生活を続けられなくなるのではないかということを世界的にいろいろな人が警告して、“ピークオイル”と言っているのです。石油がなくなるとごく少数の人が農業で他の人を支えることはできなくなるということです。農業だけではなく、雪国の喜多方での暖房にほとんどの方が使っている灯油がもし1リッター1000円になったら…ということを真面目に考えているのが私で、間伐材を燃やしてこの前の冬は灯油を一滴も使わずに何とか過ごすことができました。

小野:長谷川さんに会った時は正直あんぐり笑えるような話をしてくれまして、滅茶苦茶面白いなと…。・・・普段生活している方が何を考えているのか、相手のことに対してどれほど好奇心を持つかとか、じゃあ自分は何を考えているのか?・・・例えば子供がいたとしたら、自分の息子娘は何を考えているのだろうという好奇心が「精神の〈北〉へ」というコンセプトへの大きなワンステップになるのではと考えています。その中で長谷川さんのやっていることは一気に10ステップぐらい勝手に発進しているのが面白く思います。それで馬2頭は、実際に実践していく中でペットではないですよね?

長谷川:馬糞が良い肥料と燃料にもなるので馬を飼っているのですが、「なんでお前は乗らないのだ」と言われるので、そろそろ乗ってみようかと… (笑)。私の住んでいる早稲谷でも60年前に遡ると馬が20頭、農業とか運搬に使われていまして、餌として雑草を食べさせていたのです。この季節になると葛(クズ)が繁殖してはびこる厄介者の代表格ですが、馬にとって葛は大好物で、よだれを垂らしながら食べるのです。こんな厄介物が、馬を飼ったらこんなご馳走に変わるのか!ということが発見でした。

小野:2年経って、元々始めようとした早稲谷の生活は長谷川さんにとってどの辺のポジションにあるのでしょうか?

長谷川:何パーセント達成したかと考えるとあまり楽しくないので、・・・想定外のことがあっても楽しくやっていくということ、結局楽しい顔をしていないと他の方も集まってきてくれないので、顔はいつも笑うようにしています。

小野:ストレートに、長谷川さんにとって「精神の〈北〉へ」とは何か?言葉で。

長谷川:東北は農業の面から言うと食べ物を作って都会に送る、農家の働き手も都会に送るというところだったのですよね。だから「精神の〈北〉へ」というとそこが大事なところかなと思いました。もうひとつ、私がたまたま移り住んだ山都町は昔交通の要衝で、栄えた時代は芸術家のパトロンとして、喜多方よりずっと芸術家が集まったそうです。町名のとおり山の都ですかね、山が栄えて、農業も栄えて、交通も栄えた。そういう芸術が栄えるような田舎であり続けるということはゆとりがあることだし、それ以前の問題として、戦争がない平和で豊かな国・地域であるということなので、芸術が栄える田舎というものになっていければなということが私なりの一つの答えかと思います。

葉羽 3回シリーズでお送りするこのクロストークは各20分のトークからの抜粋です。詳しい内容は、来年発行される記録集に掲載される予定です。

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