国際野外展「ART Ii Biennale 2010」の参加アーティストとして、ビエンナーレの主催者でレジデンスでもあるKulttuuriKauppila Art Centreに滞在しながら、フィンランド中部の静かな田舎町Iiでの1ヶ月あまりの日々を送った。
「ART Ii Biennale 2010」には、Maria Pan=nguak` Kj=rulff(グリーンランド)、Egil Martin Kurd=l(ノルウェー)、Linus Ersson(スウェーデン)、Lars Vilks(スウェーデン)、Helena Kaikkonen(地元Iiからの参加)、丸山芳子(日本)の、合計6人のアーティストが招待された。
※「ART Ii Biennale 2010」
日本とフィンランドのレジデンス同士のアーティスト交流企画により、私のみ主催側から長期滞在を希望され、滞在中にセミナーやワークショップを行ったが、他のアーティストたちは開催前10日間の滞在である。
私が早くから滞在していても、運営側がビエンナーレの作品制作対応モードに入っていないので、制作方法の検討や資料集めの準備はできても、制作開始は他のアーティストより数日前に過ぎなかった。
時間をかけてつくるプランを考えていた私にとっては、材料購入が可能になるまで制作開始をじらされたが、それまでの間、作品に反映させたいフィンランドという国や人々について、旅をしたり暮らして人々と親しくすることによって得たものは大きかった。
作品のためだけではない。ここで感じたことは、私の人生観に影響を及ぼすほど大きかった。
フィンランドについての知識はわずかしかなかったが、作品概要は日本を発つ前から考えていた。
スウェーデンとロシアという2つの強国の間で翻弄された苦難の歴史を歩み続け、それに加えてマイナス40度もあり得る長い厳冬の国。
これまで人間の本質を見つめようと作品をつくってきた私としては、フィンランドの人々をテーマにしたいと思った。
彼らを象徴する形を探したとき、森、湖、氷河、オーロラという希有な自然や自然現象と生きている彼らを、激流の川を流れる木の葉に象徴させようと思い立ち、作品「Leaf Boat (葉の舟)」を計画してこの滞在に臨んでいた。
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「Leaf Boat (葉の舟)」 |
そもそも、この日記を始めた目的は、フィンランドでの滞在制作を記録することにあった。
ところが、制作が佳境に入ると、思考のすべてが、寝ても覚めても、作品制作の進行や対策のほうへ行ってしまっている。
そのうえ、所は白夜の夏のフィンランド。日没は夜中の12時半ごろなので、11時ごろまでは照明なしでも野外作業が可能だ。
疲れを感じるまで作品設置現場での作業をして、シャワーや夕食が済んだらもう眠くて日記どころではなくなる。
そんなわけで、制作に打ち込む日々を刻々と記録することはできなかった。有意義だった滞在生活の中で、ただひとつ残念だったのがそのことだ。
…そして帰国後、次々に差し迫ることに対応するうちに、滞在制作記録を旬のうちに公開するタイミングをすっかり逸してしまったが、記憶が鮮明なうちに…と帰国便のなかで一睡もせずにメモを記しておいてよかった。
そのノートから転機しようと思う。ひとまとめにしたかったので、非常に長くなるのをお許しいただきたい。
制作の日々・・・・・
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