【外伝/リーフパイについて(もしくは母の思い出)】
亡き母は旅行や出張以外では会津から出たことが無く、終生会津若松市内に住み続けた人でした。地元の高校を出ただけなので、特別に何かの教育を受けたわけでもありません。 平凡な母でしたが、時にフト詩的な表現をすることがありました。 いつの頃かも忘れましたが、私が何かの折に「アップルパイ」の話をしたことがあります。私がそんな話を母としたというのは、恐らく私が小学生位まででしょう。 その時の母の反応が「パイというお菓子は、知らない人に会った感じがする」という表現をしたのです。 もう何十年も前の話なのに記憶に残っているのは、その言い方が妙に耳に残ったからだと思います。 どうも母は「パイ=リーフパイのような乾いたお菓子」と思っていたようで、その他所他所しさや、しっとりしない感触を、そういう風に表現したのだと思います。当時の子どもの私は良くわかりませんでしたが、その頃の母の年齢を超えた今だと何となく理解できます。 そんな母でしたが一度食べたアップルパイで宗旨替えして、晩年はアップルパイが大好きになってました。 ふと、冬の午後にそんな母とのやり取りを思い出したので残します。
(2020.2.18掲載) |