遠い記憶 by 大和伸一
ある作家のエッセイで
遠い昔に亡くした兄と一緒に
山歩きした思い出話を読んでいて
ふと 弟を連れて北八ヶ岳へ登ったことを思い出した
空は抜ける様に青く
遠く南アルプスの稜線に朝陽が当たり
薄紅からピンクへと
綺麗なグラデーションがかかってくる
それを見た弟は 感動して
一生懸命言葉を探している
やがて風が出てきたので
大きな岩の陰でザックを下ろして珈琲タイム
コンロで溶かした雪で湯を沸かし
大事に持っていった豆をフィルターで濾す
すると
先程まで寒いとボヤいていた弟が、
一連の仕草を見ながらボソリと一言
「雪山が好きという意味がわかったような気がするヨ」
来週からは春の陽気だという
フッとまた雪山に登りたくなった |