PART 4 「観音菩薩」
ある時、 海岸から100㍍も離れていない場所に 根は張ったまま幹が裂け まるで天に向かって槍を突き上げているような 一本の木が残っていた
樹皮は剥がれ 引き波でビニールが引っかかっているのだが 衣をまとった 生まれたての観音菩薩のように見えた
思わず手を合わせた
(金澤文利)