PART 1 「夢の跡」
「施設の入口ホール(南)に置いてあったグランドピアノがどう流れたもんだか機械室の横の(北)出入り口まで流されていたのですよ。」と施設関係者は話していた。
ここはちょうど津波の境界線にあたる。波打ち際であっても壁に染み込んだ波の跡がその現状を語る。
今回の震災の情報で私が福島県関係の被災状況で初めて耳にしたのがこの老人保健施設の情報。ラジオでは入居者および施設職員ほぼ全滅と報道されていた記憶がある。
多くの報道関係に取り上げられた施設だが今では解体工事が終わりあとは瓦礫を撤去するのみとなった。最終的には更地になる予定だ。傷口は完全に塞がれる。終の棲家としてこの施設で余生を送った多くの方々の夢の跡だ。