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25 「火のみ塚」

むかし。 長者原というところさ「火のみ塚」という塚が畑の中さ、残ってたど。「火を見る塚」がいつのまにか「火の見塚」というようになったど。 長者原の五助という者がなんか金儲けはないかと、オシンメ様*さ拝んでもらったら「塚」さ千両箱が五つも埋まってると言われて、たまげたど。 掘った者の家は必ず火事になるといわれていだがら、五助はおっかなぐては、掘るごとはできながったんだけんちょも、千両箱をあきらめることはできなかっだと。 五助は我慢できねぇで、ある晩、家の者さ火の番を言いつけて、塚を掘ることにしたど。何回も家の方さ振り返ってみても家の方さ煙は見えながったど。五助は千両箱よりもいつ自分の家が火事になっか心配えでいらんにぇがったど。 ほうしてとうとう五助は毒気*に当たったようになって、その場に倒れちまったど。 ほれがら五助の家がら火が上がって、やっぱり家は丸焼けになっちまったんだど。 今でも長者原の人々は「火のみ塚」を恐っかながってほってみっぺど言う者はいねえって話だど。

*オシンメ様:拝み屋 *毒気:わるぎ、毒となる成分 「おおくまの民話」火のみ塚より抜粋。

(2014.5.28)Ookuma


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