【常緑名画座だより】#049〜おかえり寅さんアゲインわず
スクリーンで実際に観(み)、DVDも全50巻持っているのに、性懲りもなく、BSテレ東で『男はつらいよ 50 おかえり寅さん』を観た。
このシリーズ第50作には、生身の寅さん(渥美清)もおいちゃん( 森川信、松村達雄、下條正巳)も、おばちゃん(三崎千恵子)、御前様(笠智衆)、タコ社長(太宰久雄)も、もちろん出ていない。
フラッシュバックで流された歴代マドンナのうち、冬子(光本幸子)、志津(新珠三千代)、貴子(池内淳子)、千代(八千草薫)、ぼたん(太地喜和子)、早苗(大原麗子)は、とうに鬼籍に入っている。
出ているさくら(倍賞千恵子)も博(前田吟)も、満男(吉岡秀隆)、リリー(浅丘ルリ子)、泉(後藤久美子)、泉の母・礼子(夏木マリ)、あけみ(美保純)も、み〜んな老けてしまった。それだけに見ていて辛い。
作品としても良い出来とは言えない。だが、画面に流れる50年に及ぶ数多の映像を通して、この映画と並行して歩んできた自分の来し方、記憶が蘇るからなのだろうか、なぜか涙腺が弱くなる。
映画館でも目をくしゃくしゃにしている年配の人をたくさん見た。
…今でも寅さんの口上が耳に蘇ってくる。
〽 遅ればせの仁義、失礼さんでござんす。
わたくし、生まれも育ちも東京葛飾柴又です。
渡世上故あって、親、一家持ちません。
カケダシの身もちまして姓名の儀、
一々高声に発します仁義失礼さんです。
帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎。
人呼んでフーテンの寅と発します。
皆様ともどもネオン、ジャンズ(ジャズ)高鳴る大東京に
仮の住居まかりあります。
不思議な縁持ちまして、たったひとりの妹のために粉骨砕身、
売に励もうと思っております。
西に行きましても東に行きましても、
とかく土地土地のおあにいさん、おあねえさんに
御厄介かけがちなる若造でござんす。
以後見苦しき面体お見知りおかれまして、
恐惶万端引き立って、よろしくお頼み申します。
毒舌亭(2021.3.24up) |