【常緑音楽館便り】#1295 どんでんがえし〜貴方にひざまづいて
先日、東日本大震災で家族を失った少女の再生の旅を描いた邦画「風の電話」(2020 諏訪敦彦監督作品)を観、昨夜は송강호(ソン・ガンホ)主演の韓国映画「효자동 이발사(邦題:大統領の理髪師)(2004 임찬상(イム・チャンサン)監督作品)」をDVDで観た。
そのソン・ガンホ主演で1月10日から一般公開が始まった韓国映画「기생충(邦題:パラサイト 半地下の家族)」(2019 봉준호(ポン・ジュノ)監督作品)をどうしても観たいとの相方の脅しに負けて映画館へ。
最初は喜劇映画かと見まがうような滑り出しだったが、次第に予想のつかないスリリングなストーリー展開で圧巻の悲劇を描いたこの映画に、我が居眠り癖が最後まで発動することはなかった。
内容は省略するが、2018年度に是枝裕和監督の「万引き家族」がカンヌ国際映画祭パルム・ドールを獲得したのに続き、これは韓国のいわば「詐欺家族」映画と言って良い。
韓国では動員1000万人を突破したという。作品のキーワードは「格差社会」と「モールス信号」。とにかく楽しめる映画でお薦めだ。どの役者も素晴らしい演技だ。
見終わったところで、館のスタッフから「たった今、アカデミー賞作品賞を獲得した」との報告。なんという偶然、Good Timing。
カンヌなどヨーロッパ系映画祭と違い、アカデミー賞はD・トランプ並みに「アメリカ・ファースト」「白人ファースト」の傾向が顕著で、その人種多様性の欠如は「White Oscar」と揶揄されてきた。
自分としては今回も「Joker(邦題:ジョーカー)」か「Once Upon a Time in Hollywood(邦題:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド)」が本命だろうと予想していただけに、韓国はもとよりアジア系の「外国語映画」が史上初めて作品賞を受章したという意外と言えば意外の大逆転結果に驚いた。
最近、有色国民系などからの批判が強くなり、この業界もダイバーシティ(多様性)を重んじるための「構造改革」を余儀なくされたのだろう。
アカデミー賞作品賞とカンヌ・パルム・ドールを同時に受賞した作品は、以前にも紹介したが、「The Lost Weekend(邦題:失われた週末)」(1945)と「Marty(邦題:マーティ)」(1955)だけだったから、これが3本目になる。65年ぶりの快挙だ。
ところで、Evergreen Music通算1295曲目は、なぜかこの映画の画面で流れたイタリアの懐かしいポップス。
75歳になった今もなお第一線で活躍する国民的なスター、Gianni Morandi(ジャンニ・モランディ 1944-)が1964年のCantagiro (カンタジーロ・フェスティバル)でグランプリに輝いた曲だ。
♬ In Ginocchio Da Te(貴方にひざまづいて)/Gianni Morandi
https://www.youtube.com/watch?v=aPJAtfS0O6k
毒舌亭(2020.2.12up) |