その93
目次へ前へ次へ

 

   おふくろ亭 (詩:葉羽)

 アパート暮らしの学生の頃
 決まったように通っていた
 貧乏学生の週に一度の贅沢
 それは 溶き卵をたっぷり纏ったカツ丼

 仙山線の北山駅の近く
 おふくろ亭はガードを越えた坂の上
 お婆ちゃんがたった一人で
 切り盛りしている小さな食堂

 あれはクリスマス・イブ
 雪がシンシンと降る夜のこと
 いつもありがとねの言葉と共に
 付かないはずの味噌汁が付いてきた

「今日はクリスマスだからね」
「クリスマスに味噌汁かよ」
 おどけた調子で答えたけれど
 本当は泣きたいくらい嬉しかったんだよ

 あれから四十年・・・
 店は多分もう残っていない

 だけど
 お婆ちゃんに教えられたことは忘れない
 幸せというのはとても小さなものだと

 貧乏学生の青春の記憶
 人生で一番美味しかった
 クリスマス・イブのカツ丼の思い出

Poem by 葉羽
 MP3 by TAM Music Factory“聖夜”
  Site Arranged by Habane
   (※2016年のクリスマスに)

PAGE TOP


 

banner
Copyright(C) Habane. All Rights Reserved.