その64
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  夢芝居 (詩:葉羽)

 昔 夢芝居という流行歌があった
 あれはどのくらい前だったか・・・

 芝居なら小さな頃 見たことがある
 歌舞伎や浄瑠璃じゃない もっと素朴な

 ・・・いったいどこで見たのだろう?

 そうだ あれはたしか
 ばあちゃんに連れられた神社の境内
 露天の綿飴売りの奥に
 いつの間にかできた掘立小屋

 入口の莚をくぐると
 ゴザに胡座をかいた観客たち
 座長の挨拶が終わると
 割り緞がおもむろに開く

 大人の背中で舞台は見えない
 肩越しにのぞくと
 何やら大袈裟な立ち廻り

 役者が見得を切ると 沸き起こる喝采
 立ちあがって叫ぶ人 飛び交うおひねり
 芝居が終われば一抹の寂しさ

 帰り道はきっと眠っていたのだろう
 覚えているのは ばあちゃんの背中
 優しいぬくもりと砂利を踏む足音だけが・・

Poem by 葉羽
 MP3 by Remair “古の舞”
  Photo by 大和伸一 “夢芝居”
   Site Arranged by Habane

 


 

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