【産業社会は行き詰った】
今日、世界のいたるところに、いっせいに巨大な波が押し寄せている。
そして、人間が仕事をし、レジャーを楽しみ、結婚し、こどもを育て、
やがて引退していく環境を、この波が一変させ、しばしば奇妙な状況を出現させている。
こうした混乱した状況の中で、ビジネスマンは極度に変化の大きな経済の流れに逆らって泳いでいるのであり、政治家たちは自分たちに対する支持率が極端に上昇したり下降したりする現実に、目を見はっている。
大学、病院そのほかの機関は、インフレに対して絶望的な戦いを続けている。価値体系そのものが分裂してしまい、家庭や教会、国家といった救命ボートも、激しい勢いで海中にたたきつけられている。
こうした激しい変化を目の前にして、我々はそれらの変化を、不安定で、分裂と混乱をくりかえす世情を物語る現象として、ばらばらに受けとめがちである。
しかし、もう少し冷静になって、もっと長期的見地から見ると、ひとつひとつの現象にひきずりまわされていた時には気がつかなかったことが、
いろいろ見えてくるはずである。
まず第一に、今日起こりつつある変化の大部分は、相互に無関係ではないということである。また、けっしてでたらめに、脈らくもなく、こうなってきたわけではない。
たとえば、核家族の崩壊、地球全体のエネルギー危機、新興宗教の隆盛、ケーブル・テレビジョンの普及、フレックスタイム制の一般化、有給休暇や健康保険など、一連の付加給与の増大、カナダのケベック州からフランスのコルシカ島まで、世界各地における独立運動の出現といった現象は、それぞれ無関係の出来事のように見えるかもしれない。
しかし、注意深く観察すれば、事実はまったくその逆なのだ。こうした現象をはじめ、そのほかもろもろの一見無関係な出来事ないし動向は、相互に深い関係を持っている。それらの現象は、実は、より大きな現象の一部にすぎない。
それは産業主義の終焉と、新しい文明の出現を意味している。
序論より
1980年10月1日出版 第三の波 日本放送出版協会 |