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その94

人生は流しソーメン

 前号で「人生はゲーム」なんて達観したような事を書いたが、ゲームオバーしたら、私の戒名は「上野地面水絵誇示居士」か。

 誇示と居士をカケてみたが、よけいに話がコジれる。

「いこじはるコジハルがコジルリとこじれる」って芸能界ではありそうで、どの世界でも人間関係は難しい。

 過日、某地区の集会所で行われた老人会のデイサ―ビスでアート活動を行った。

 昨年の公民館と福祉施設に続いて3回目になる。私は「風に吹かれて」彷徨い、独り善がりの無意味な芸術路線なのだが、たまには社会的貢献もしなければ、子供や孫から尊敬されない。

 今春、孫の帰省時に戯れて絵を逆さに描いたりして遊んでいたら「じーちゃん、どーして、いつもふざけてるの」と孫に厳しい御言葉をいただいた。

 埼玉に帰った孫が時々、私のマネをして逆さ描きをするらしい。

 マズイ、このままでは祖父の信用失墜、威厳喪失だ。社会的貢献をして名誉回復しなければならない。

 疲労回復はリポビタンDだが名誉回復に効果のあるドリンク剤はない。薬物に頼らず地道にがんばる。

 デイサービスで世話人が、講師紹介をするのでプロフィールを教えてほしいと言うので、以前に上野公園で新聞に取り上げられた記事を渡した。

 何度か読み直していたが、いまいち理解できないようすだった。

 私自身も自分のやっている事を、言葉で上手く説明できない事がよくある。

 参加者は約50名で年齢は65歳から95歳だという。最高齢者は大正生まれで、あっぱれだが「あんたがタイショウ」か。

「私はショーワ」だが昭和生まれは多過ぎて威張れない。

 私の前の活動は体操で、全員が椅子に座り上半身を動かす活動をしていた。

 講師は私より年配の女の方だが姿勢もよく若々しい講師だ。

 容姿は芸能人に例えるなら、十年後の小柳ルミ子だが「♪コーシ戸をくぐり抜け」って、そのコーシではありませんから。

 コーシ混同だが「コーシテ、アーシテ」と指示どおりに参加者全員が同じように運動するのがすごい。

 私の番になった。

 ホワイトボードに絵や文字を逆さがきするだけでは、イマイチなので、ジョークを言いながら描画した。

 牛が笑うと、「ウッシシ」 
 悪いトラは、ヨコシマなトラ。
 悪いウサギは、「オレオレ、うーさぎ」
 ヘビが二匹で、二ヒキ蛇。

 反応はまあまあだったが、最前列の高齢のおばあちゃんが全く笑わない。

 なんとか笑わそうと、ジョークを続けたがダメだった。

 あとで世話人に聞いたら、その方は当日、補聴器を忘れたらしい。

 最後に希望する方に、一人ひとりに干支をカードに描いてプレゼントした。

 干支を忘れた方がいても干支年齢早見表を準備していたので描けるが、生まれた年を忘れた方には対応できなかった。

 仕方ないので十二支全部描いてあげたが、この中に自分の干支はないという。

 長く生きていれば、多少の事は「エー」とするしかない。

 好きな動物を聞いたらネコというので、ネコを描いたが高齢の雌猫をネコババとは言いませんから。

 その方は自分の星座名も当然、解らないのだが、昔は「乙女座」だったに違いない。

 次の活動は合同カラオケで「一緒にどうですか」と誘われたが遠慮した。

 ちらっと見た譜面は藤山一郎や春日八郎、美空ひばりで私には10年早い。

 最後はお昼に、みんなで仕出弁当を食べて終わる。

 私も弁当をいただいたが、高齢者向けのカロリー控えめの弁当で、あっさりして美味しい。

 こういう弁当が口に合うようになってしまって高齢者目前を感じる。

「♪ああー、川の流れのように、ゆるやかに、いくつも時代は過ぎて」だが、人生は「流しソーメン」のように、あっという間に過ぎてしまう。

 油断するとソーメンさえつかめないが、嫌な思い出や、つらい過去は、みんな水に流して生きていこう。

「白石の人がソーメン食べて、うーめん」なんて赤面しながら書いている私だ。

 (2018.6.17)アンブレラあつし

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