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その243

突然の訪問者は青春18切符

 3月末に、日本人学校で一緒に勤務し、今は長野県で教員をしている先生から突然電話があった。

 4月の第一金曜日に福島に行くので会えませんかという内容だ。

 私はいつでも「サンデー毎日」で暇だが、彼はまだ現職だ。

 4月の年度始めは何かと忙しいはずなのにと思い、電話で仕事は大丈夫なのか聞いてみたら休職中だという。

「休職」と思わず問い直したが、この時期に休職って、ちょっとヤバイ。

 詳しい話しは福島で酒でも飲みながら聞くことにして、電話では明るく話した。

「休職って学校では、よくある話しで、学校キューショクなんて毎日あるよな」なんてジョークを返したが、イマイチ反応がなく、よけいに心配になった。

 当日の夕方、福島駅近くのホテルに会いにいって駅近の居酒屋でイロイロと話した。

 彼はあと2年で定年退職で私より約一回り若いが、もう働く気力がないという。

 仕事を辞めて特にやりたい事があるのなら辞めてもいいが、何となくヤメルのは避けたほういい。と自分の事はさておいて先輩らしくアドバイスした。

 休職の理由は心の病気、精神疾患だという。

「心の病」に対する特効薬はないが、昔から酒は「百薬の長」なので深酒という投薬治療をした。

 始めは生ビール、そして福島の地酒、会津の「国権」や二本松の「大七」を冷や酒で飲んだ。

 ツマミはイカ人参、にしんの山椒漬け、鮭の紅葉漬け、メヒカリの唐揚げ、馬刺し、円盤餃子と福島の郷土料理を次々頼んだ。

 酒は美味かったが、酒の肴は、どれも量は少なく味もイマイチだった。

「名物にうまいもの無し」なんて言い訳したが、彼は美味いと言って全部食べた。

 ツーカ、イカ人参とか紅葉漬けは、福島の冬の季節の食べ物で、この時期に出すのは邪道だ。

 駅近で、とりあえず福島の名物が何でもある店を選んだ私が愚かだったが、今は冷凍でいつでも何でもアルアルだ。

「今が旬です」なんて言葉もなくなってしまうと「シュン」とする。

 彼は鉄オタで長野から一人で「青春18切符」で来たという。前日は宇都宮に泊まったらしい。

 翌日、時間があれば「古関裕而記念館」を案内しようとも考えたが、朝早く仙台に行き、鳴子温泉、山形へと旅するらしい。

「病休」とは言いながら、これは「仮病」だなんて、内心思いながらも下手なことは言えない。

「心の病」は取り扱い注意だが、4月の年度始めに休職している事は普通ではない。やっぱ、病気だ。

「今後、何かやりたい事がないのか」と聞くと、いつかシベリア鉄道でヨーロッパに行きたいという。

 彼はロンドンにいた頃、「オリエントエクスプレス」にイタリアのベニスまで乗車した事がある鉄オタだ。

「ロシアは今は戦時中なのでシベリア鉄道はヤバイが、あと2年もすれば停戦するので、それまで仕事がんばれ」なんて妙な説得をした。

 太田裕美の「♩さらば、シベリア鉄道」って、いい歌だよな。なんて話題を選びながら、とりとめのない話しをする。ロンドンのカラオケ屋では「♩あずさ2号」が彼のオハコだった。

 翌日、彼から、私と話して元気が出たとメールがきた。今、思えば桜前線を追う、みちのく一人旅だったのか。

「♩8時、ちょうどの、あずさ2号」で無事、長野に帰ってほしい。

 前記した太田裕美は「♩恋人よ 僕は旅立つ 東へと向かう列車で」と歌うが、東に上京する列車は新幹線か。

 当時たぶん新幹線「のぞみ」はなかったが、上京する若者に「のぞみ」はあったな。

「♩上野発の夜行列車、降りた時から」は昭和の「八甲田」「津軽」で、令和の「四季島」はあり得ない。

 いつか宝くじが当たったら「四季島」に乗りたいと「ヨコシマ」な事を考えている古希マジカの僕です。

 (2024.4.27)アンブレラあつし

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