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その4

鯨に乗りたい中年

 イルカにの乗った元少年も中年になり、やがて老年になる。

 老年になれば力もなくなり長くイルカにつかまる事もできない。

 海の中に落ちれば「老人と海」だ。 鮫に食われてしまう。

 鮫に食われて死んだら家族は葬式でさめざめと泣いてくれるだろうか。

 それとも水葬にしてそのまま「かまぼこ」の原料にしてしまうだろ うか。

 などと妄想しているうちに目が覚めた。夢だった。

 昨晩、へミングウェイのまねをし、かっこをつけてウイスキーを飲んだから悪酔いをしたのだ。

 鯨に乗 ったらどうだろう。

 鯨はでかいから老人でも乗れるか。

 目が覚めて正気になっても妄想している。

 白ながす鯨はかなりでかい。上野の科学博物館にそのレプリカ がある。

 屋外にあるので入場しなくとも見れる。

 鯨に乗ることを想像していると何故かピノキオのゼベットじいさんの事が思い浮かんだ。

 記憶は定かではないが 彼は鯨の中で一時生活していた。

 常識的に考えて酸素不足で死んでしまうが、子どもの頃読んだ少年雑誌に鯨の体内から生還した記事があった。

 捕鯨した鯨の胃 を切開したところ生きた人がでてきたという。

 2歳年上の兄に記事の話をしたら嘘にきまてっると一蹴された。

 でも私は短時間なら生存の可能性があると思った 。

 生還者の髪は鯨の胃の胃酸で真白に脱色してたなどと妙にリアリティーがあったのである。

 水撒きをしながら鯨も描く。

 しおを吹かせた形を描きその上に立つ。 妙に嬉しい。

 「鯨のウオシュレット」などと言って笑いをとり一人満足する。

 (2015.6.17)アンブレラあつし

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