(※背景写真:モンマルトル)↓
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「Fusses Over」

佑樹のMusic-Room
その29電柱と看板のない街♪の巻」
by ピカイチ君&葉羽
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葉羽 ピカイチ君の「欧州のまちづくりレポート」のシリーズ第七話でございます。

ヨーロッパには電柱がない。看板がない。】

ピカイチ君  今回、ロンドン、フランクフルト、ハイデルベルグ、ローテンブルグ、ミュンヘン、ミラノ、フィレンツェ、ローマ、ナポリ、パリと4カ国の主要都市を視察したが、どこも電柱がない。

 信号は背丈ぐらいに直立し、街灯も少ない。電線らしいのは路面電車のあった都市ぐらいか。町並みはとてもすっきりして美しかった。すべてが絵になる。

出窓に花

出窓に花

(パリの集合住宅)

 バロック建築の景観は建物の均一性、統一性にあり、この演出的背景に電柱は猥雑であり、景観には邪悪の何ものでもない。

 看板、公告物も同じである。自分の店ですら看板の位置、色彩、デザインすべて届け出によりチェックされる。2階以上の看板・公告は見えなかった。

 ガイドの話によれば自分の店に出す看板、ショーウインドーですら公衆に触れるところはすべて面積で税金がかかるそうである。

 ロンドン、パリは石造りであり基本的な都市計画が完了したのち産業革命での電気の普及で電線はビルを繋いだと言うし、そもそも電柱はなくてもよかったのかもしれない。

 またロンドンの中心市街地の土地建物はエリザベス女王から借りているものであり、自己の公告などありえなかったのかもしれない。

 ただし、各都市には広告塔があって、ここだけが許されている。

 日本と同じような看板公告だったのはナポリだけだったような気がするがここでも一部の街路だけでであった。

ビア・ガーデン

ビア・ガーデン

(ミュンヘン)

 商店が公告に変わるものはショーウインドーであり、店の顔として陳列する。

 これを見ながら歩くことは夢をかき立てとても楽しいものだった。店に入っても店員がいかがですかと寄り添ってくることはなかった。

 客を大切にしていることが伺える。もっとも買いそうには見えなかったのかもしれないが・・・・・。

 シャンゼリゼ通りでヴィトンの前で2時間も列を作っていたのは日本人で、恥ずかしい限りだ。

 買いあさりのショッピングツアーにパリジャンは閉口しているのではないか。店員は日本人には売り惜しみしていると言っていた。

 美しい都市の景観に日本人の買い物風景は極めてなじまないものだ。

 ヨーロッパでほとんど見なかった電線、日本ではCCBが街並みの景観形成として積極的に行われている。

 しかし、借景となる背景にもっと配慮すべきであり、公告・看板・ネオンがCCBの効果を大きく下げている。

 CCB事業には地区計画とセットで背景整備をする必要があると考える。

 ※CCB・・・電線共同溝。CCB事業は共同溝を用いて電線を地中化する事業。

リージェント・ストリート

リージェント・ストリート

(ロンドン)

 今回の視察で特に感じたのはロンドン、パリ、ローマ等のバロック建築様式都市の広幅員直線街路とそれらの終点に位置する建造物である。

 視覚的な一点透視図の美しさを演出する。

 街路に面した建物は均質な表情が効果的で、高さ、色などデザインは統一されている。

 そのため視点の行き着くところに絶対的な権威を象徴することになる。

 パリの凱旋門から放射状に出る12本の街路、オペラ座の正面玄関にすわってみると、ここを中心とした街路の対称性に驚く。

 ローテンブルグのような教会を中心としたドイツの城壁都市に見られた中世都市にあった広場や居心地のよさは切り捨てられている。

 19c、都市内の急激な車社会化と衛生問題の解決のために、ヨーロッパの主要都市はバロック建築の大胆で明快な都市づくりがなされた。

【中心市街地が変わらないヨーロッパと中心のない日本の中心市街地】

 先にも触れたがヨーロッパは教会と広場が中心になって城壁がまちの輪郭をかたちづくってきた。

 近代になり城壁は意味を持たなくなってからは、パリ、ロンドンはこれを壊し環状線にしたり拡大してきた。

 ヨーロッパは中心市街地と郊外が実にはっきりしている。城壁が住民を守り、城壁内が中心市街地でそのシンボルとして教会があった。

 そして住居がある。広場がある。人々の生活の中に中心市街地がある。

 そもそも日本には城壁はなく、中心市街地の成り立ちが日本は街道の宿場町であったり、城下町であったりしてきた。

 その後、鉄道が出来、駅を中心とした町が今の中心市街地の骨格を形成している。

 その後の急激な車社会が個人のモビリティーを革命的に向上させ、都心居住から庭付き1戸建ての郊外居住を加速させた。

 郊外の大規模な小売店は車社会と消費者ニーズに適応したものだ。県内どこでも人口は減っても住宅戸数は増加している。

 開発圧力は投資コストの低い郊外部へ働く。日本は歴史的にその社会背景に応じて中心市街地が常に動いてきた。そもそも永遠なる中心市街地などはなかった。

マルクト広場

マルクト広場

(ハイデルベルグ)

 今、かつて賑わった駅前のまちは寂れている。中心市街地の過疎化だ。まちには子供が少なく複式学級や郊外に通学するような事態は近い。

 高齢化率が一番高いため、再開発事業等の合意形成が困難である。そして中心市街地活性化として商業空洞化対策が突出してなされている。

 未だ活性化対策に有効打は出ていない。中心市街地空洞化の根本原因が整理されていない。空洞化という現象に対して対処療法しか講じられていない。空洞化は重度の成人病なのだ。

 そもそも中心市街地は日本にはなく、時代時代で動くのである。

「誰のための、何のための中心市街地か」という根本的な課題が整理されていない。

 個人のライフスタイルに大きく影響されている。

「自分のまちの中心市街地は誰にとってなぜ必要なのか」「なぜ市街地は空洞化してはいけないのか」、この基本的な理念(コンセンサス)を市民が議論して出来ている活性化基本計画に私はまだ出会っていない。

葉羽 次回は、西欧の公共空間に見られる共通の法則について。

《配信:2019.10.17》ピカイチ君 ピカイチ君葉羽葉羽

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